JASMの企業研究:売上・年収・特徴
会社概要
JASM株式会社は2021年に設立された、熊本県に本社を置く企業です。メイン事業は半導体の受託製造、すなわちファウンドリです。
世界最大のファウンドリであるTSMCが過半数を出資、ソニーとデンソーが少数株主として参画している企業です。
なお、社名のJASMは「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing」の頭文字に由来します。
JASMの求人情報
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沿革
JASMは、国際的な半導体サプライチェーンの見直しと、日本政府の支援に後押しされる形で設立されました。
2019年5月、アメリカにより、アメリカ製の機器・ソフトを使用した半導体製品のHUAWEIへの輸出が禁止されました。この出来事を発端に、半導体サプライチェーンの分散による、半導体地政学リスクの軽減が世界的な課題として浮き彫りになりました。すなわち「自国で半導体を製造できる体制を整えることが、自国の産業を守るために急務である」ことが再認識されました。
世界各国のTSMCに対する要請により、2020年5月、TSMCはアリゾナに5nmプロセスの工場を建設する計画を発表しました。
2021年10月には、TSMCが日本で初となる工場「JASM」の建設を発表しました。この発表の2ヶ月後となる2021年12月、日本政府は半導体関連の設備投資を支援する関連法案を成立させ、2022年6月に「JASMへの4760億円」の助成を決定しました。
半導体安定供給に向けた、日本政府が後押しする国内ファウンドリとして「JASM」は設立されました。
JASM設立の背景
JASM設立の背景として、大きく以下の4つが挙げられます。
- 地政学リスクの分散
- 世界的な半導体不足
- ロジック半導体の安定調達
- 国内半導体産業の強化
半導体は経済安全保障上の最重要材料です。現状、半導体サプライチェーンは世界に分散している状態です。しかし、米国による中国への半導体規制や、台湾軍事進攻の懸念により、半導体サプライチェーンの分断が危険視されています。半導体がなければあらゆる製品(軍事用途含む)が作れず、経済活動の停滞が予想されるため、半導体の国産化が世界的に進行しています。
新型コロナウイルスによる巣ごもり需要、自動運転やAIといった新たな半導体需要により、世界的に半導体が不足しています。また、追い打ちをかける様にアメリカによる中国への半導体禁輸措置、日本やアメリカの工場災害による工場停止が発生し、半導体不足はより深刻化しています。半導体不足解消のため、半導体工場設立が世界で進行しています。
ソニーグループはCMOSイメージセンサー(CIS)世界シェア1位ですが、CIS製造にはロジック半導体が必須です。SONYの新たなCIS工場はJASMの隣接地に設立予定となっており、JASMからロジック半導体を入手する見込みです。国内半導体企業の半導体安定製造・売上/利益確保のため、JASMが設立されたと考えられます(実際に、SONYはJASMに出資しています)。
これまで、日本には先端ロジック半導体の製造工場はなく、国内で先端半導体を製造するのは困難でした。そこで、国策として世界最大手であるTSMC(JASM)を誘致し、日本の半導体人材育成と共に、日本半導体産業の再興を目論んでいると予想されます。
国によるJASMへの支援
2022年6月、日本政府はJASMに最大「4760億円」の支援を決定しました。JASMの設備投資には86億ドルが必要とされており、設備投資額の約半分を日本政府が負担する形です。
JASMの初回出荷は2024年12月とされ、5.5万枚/月(12インチ換算)の生産能力を発揮するとされています。
JASMの事業
JASMの事業形態は半導体の受託製造、すなわち「ファウンドリ」です。
半導体企業の事業形態は大きく以下の3つに分類されます。
- ファブレス
- ファウンドリ
- IDM(Integrated Device Manufacturer)
工場を持たず、半導体の規格・開発・販売を行う半導体メーカーのこと。
製造に特化した半導体メーカー。ファブレス企業から受注し利益を上げています。
自社で設計・製造・組み立て・検査・販売まで全て一貫して行う半導体メーカー。
半導体産業は製品開発サイクルが早く、短期間に膨大な投資が必要なため、水平分業体制が一般的であり、JASMは半導体の製造に特化した事業を展開しています。
JASMの親会社:TSMCの概要
TSMCは台湾にある世界最大のファウンドリであり、世界的な大企業です。世界最先端の半導体プロセス技術を有しており、技術力では右に出る企業はないとされています。実際、2022年には最先端の3nm製品の量産を開始するなど、他社にはない技術力を発揮しています。
TSMCはファウンドリの売上高ランキングにおいて「世界第1位」であり、売上高は約10兆円に到達しています(2022年実績)。売上高シェアは50%を超えており、売上高からも他社を寄せ付けない技術力を有すると言えます。
JASMへの出資企業➀:ソニー
ソニーセミコンダクタソリューションズはJASMに「約570億円」の出資をしています。ソニーセミコンダクタソリューションズはソニーグループの半導体部門に属する企業の1つであり、イメージセンサ―の開発・生産・販売を行うIDM(Integrated Device Manufacturer)企業です。
SONYグループはJASMに熊本県2か所目の半導体工場建設を発表しており、イメージセンサ―の製造工場と見られています。イメージセンサーに必要なロジックウエハーの安定調達を主目的として、出資したと考えられます。
JASMへの出資企業➁:デンソー
ソニーグループ同様、JASMに「400億円」を出資した企業がデンソーです。デンソーは愛知県に本社を置く、世界第2位の自動車部品メーカーです。EV・自動運転に必須な車載半導体を一部内製しています。
デンソーの有馬浩二社長は以下の様に述べています。
「自動運転や電動化といったモビリティのテクノロジー進化の中で、半導体は自動車業界に於いて、益々重要になっている。今回のTSMCとのパートナーシップにより、車載半導体の中長期的な安定調達を実現し、自動車産業全体に貢献していきたい」
すなわち、今回の出資は「車載半導体の安定調達」を目的としたものと考えれます。
JASMの年収
JASMの新卒採用(2024年)の月給は以下の通りです。
- 高専卒:28万円
- 学士卒:28万円
- 修士卒:32万円
- 博士卒:36万円
月給にプラスして、年間基本給4か月分のボーナスと年次賞与が加わるため、JASMの新卒年収はかなりの好待遇であることが分かります。熊本県内の製造業よりも7-8万円給与水準が高く、日系企業では考えられない待遇です。
また、中途採用の年収例は以下の通りです。
- 経験年数3-8年:年俸600~1000万円
- 経験年数8-10年:年俸900~1200万円
中途採用も非常に高年収であると言えるでしょう。JASMは工場設立に伴い、幅広い職種で採用を行っています。
JASMの求人情報
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参考文献
- 2030 半導体の地政学(Amazon)
- JASMについて(JASM)
- Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(Wikipedia)
- 半導体メーカーTSMCが日本に工場を設置する理由(東洋経済)
- 東京大学・TSMC先進半導体アライアンスについて(東京大学)
- 半導体市場に追い風なるか「米国CHIPS法」を徹底分析(F-Style Magazine)
- TSMCはなぜ台湾外初となる3DICのR&D拠点をつくばに設立したのか(MONOist)
- TSMCはなぜ台湾外初となる3DICのR&D拠点をつくばに設立したのか(MONOist)
- 半導体・デジタル産業戦略(経済産業省)
- 台湾積体電路製造(Wikipedia)
- Consumer Terminals Market Reverses as Tide of Shortages Recedes, 2Q22 Output Value Growth at Top 10 Foundries Falls to 3.9% QoQ(TrendForce)
- Total Revenue of Top 10 Foundries Fell by 4.7% QoQ for 4Q22 and Will Slide Further for 1Q23(TrendForce)
- TSMCが熊本に子会社設立、ソニーが570億円出資 22年に工場建設(日経XTECH)
- デンソー(Wikipedia)
- 【徹底図解】半導体市場のダークホース、 「デンソー」の正体(デンソー)
- デンソー、TSMC・ソニーの合弁会社に約400億円出資(NEXT MOBILITY)