検討から5ヶ月で熊本事業所開設:バーンイン装置大手・シキノハイテックの熊本進出

東証スタンダード上場の半導体関連企業・株式会社シキノハイテックが、くまもと大学連携インキュベータ(通称:くま大インキュ)を活用することで、2022年6月、熊本への進出を実現しました。その経緯と現在の状況を、シキノハイテックに詳しくお聞きました。

本記事は、Semi-journalがシキノハイテック、くまもと大学連携インキュベータの協力を得て作成したタイアップ記事です。

熊本・九州と半導体:シリコンアイランドの活性化

九州・熊本が半導体産業の重要な集積地として大きく注目を集めたのは、TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出(JASM)がきっかけです。関連サプライヤーの相次ぐ進出、ソニー・三菱・ローム等の大手の工場増強が重なり、熊本を中心とした九州シリコンアイランドは、さらなる発展を遂げています。

2022年6月、シキノハイテックはくまもと大学連携インキュベータ(通称:くま大インキュ)に熊本事業所を開設しました。

バーンイン装置・信頼性試験装置を手がける株式会社シキノハイテックにとって、九州はもともと顧客が多い地域でした。熊本への進出は、ある意味で「来るべくして来た」判断だったかもしれません。

シキノハイテックとは:企業概要

株式会社シキノハイテック本社

株式会社シキノハイテックは、1975年創業・富山県魚津市に本社を置く東証スタンダード上場(証券コード:6614)の半導体関連企業です。半導体検査・LSI設計・産業用カメラの3事業を展開し、売上高65億円・従業員435名(2026年3月31日 現在)を擁します。

会社概要
社名 株式会社シキノハイテック
本社所在地 富山県魚津市吉島829番地
設立 1975年1月
売上高 65億円(2026年3月期)
従業員数 435名(2026年3月31日現在)
上場市場 東証スタンダード市場(証券コード:6614)
国内拠点 本社・魚津工場、魚津第二工場、福島事業所、東京・横浜・大阪・福岡デザインセンター、九州事業所(北九州)、熊本事業所
シキノハイテックの主要事業概要

シキノハイテックは車載向けバーンイン装置で国内トップシェアを誇る

同社の事業は「電子システム事業・マイクロエレクトロニクス事業・製品開発事業」の3事業で構成されます。いずれの事業も、半導体とソリューション分野で展開し、各事業でニッチTOPシェアを誇ります。

中でも、同社の中核事業は「バーンイン装置・バーンインボードの開発・製造・販売」です。

シキノハイテックとバーンイン試験・バーンインボードとは

バーンイン装置・ボードは車載半導体の初期不良スクリーニングに欠かせない

バーンインとは、半導体を通常より高温・高電圧の環境下で動作させ、初期不良品を事前に選別する、スクリーニング試験工程です。車載半導体・AIサーバーなど止まってはいけない用途での重要性は特に高く、シキノハイテックはこの領域で長年の実績を持ちます。

シキノハイテックは車載向けバーンイン装置で「国内トップシェア」を誇ります。九州圏内ではバーンイン装置・信頼性試験装置が多数稼働しており、九州圏内でもトップクラスのシェアを誇っています(同社調べ)。

今後は高温下での信頼性試験に特化したカスタム計測機器の開発・市場展開にも注力していく方針です。

なぜ熊本に進出したのか

シキノハイテック事業所・拠点一覧

シキノハイテックは新たに熊本事業所を開設した

シキノハイテックの事業であるバーンイン装置・信頼性試験装置は、導入後のフォローが重要な製品です。装置にトラブルが発生したとき、顧客が求めるのは迅速な原状復帰です。富山から九州へ駆けつける体制では、どうしてもスピード感に限界がありました。

九州、特に熊本には半導体の後工程工場が多く、バーンイン装置・信頼性試験装置の導入実績も豊富でした。北九州に九州事業所はあったものの、熊本エリアの顧客への対応には距離の壁がありました。新しい信頼性試験装置の導入が熊本エリアで特に進んでいたことも、熊本を選んだ理由の一つです。

「顧客にとって喜ばれる対応をするためには、近くにいることが必要だった。熊本は交通アクセスも非常に良く、海外へのアクセスも優れている。熊本に拠点を持つことは、自然な判断でした」

電子制御技術部 浦崎部長

なぜ「くま大インキュ」を選んだのか

拠点を持つと決めてからも、物件探しは容易ではありませんでした。民間のオフィス・事務所・顧客の近くの物件など、様々な選択肢を検討しましたが、それぞれ一長一短があり、フィールドエンジニアとしての業務に必要な設備投資を考えると、条件に合う物件がなかなか見つかりませんでした。

くまもと大学連携インキュベータ外観

くまもと大学連携インキュベータは中小機構が運営するインキュベーション施設

そうした中でたどり着いたのがくま大インキュです。「環境が整っていた。机一つあればすぐにオフィスを開設できるスピード感が非常に良かった」見学した際の印象は「申し分なかった」と担当者 は振り返ります。

くまもと大学連携インキュベータ オフィスタイプ

オフィスタイプはフリーアクセスフロア・個別空調を完備。すぐに事業活動を開始できる環境が整っている。

一方で、上場企業としての懸念もありました。「中小機構が運営するインキュベータに上場企業が入居できるのか」という点です。しかし実際には問題なく、地域雇用の創出や地元半導体関連企業とのネットワーク形成という観点から歓迎されました。

セキュリティも万全で、県外からのアクセスも良く、最寄りの南熊本駅からは徒歩1分。すべての条件が揃っていました。

くまもと大学連携インキュベータ夜景

くま大インキュは施設はセキュリティ万全、24時間利用が可能

くまもと大学連携インキュベータ(くま大インキュ)とは

熊本進出のプロセス・タイムライン

シキノハイテックの熊本進出は、検討開始から入居まで約5ヶ月というスピードで実現しました。

2022年1月 熊本事業所の検討開始。貸事務所・各種施設を探し始める
2022年3月 くまもと大学連携インキュベータを訪問・見学
2022年4月 入居申請書を提出
2022年6月 熊本事業所を正式開設。1名体制でスタート

見学から申請まで1ヶ月、申請から入居まで2ヶ月。「机一つですぐに業務が開始できる」というくま大インキュの環境があったからこそ、このスピードが実現しました。

通常の賃貸オフィスや物件であれば、内装・設備の準備だけで数ヶ月かかります。スピーディーに入居したかった私たちにとって、くま大インキュは非常に適した選択肢でした。

シキノハイテック 熊本事業所

熊本事業所の状況

現在、シキノハイテック 熊本事業所は5名体制で稼働しています。当初は1名でのスタートでしたが、その後4名を熊本で採用。5名全員が転職者で、うち4名は熊本出身者です。

業務の中心はフィールドエンジニアとしての顧客対応です。装置の搬入・立ち上げ・導入後のメンテナンス・予防保全まで、九州エリアの顧客を近距離でサポートします。九州全域に顧客がいるシキノハイテックにとって、九州の中心に位置する熊本は、顧客サポートの面で非常に良い立地です。

くまもと大学連携インキュベータ―の立地とアクセス

海外に装置を導入する際には、熊本のメンバーが現地へ赴き立ち上げを担当することもあります。英語資料の翻訳サポートも含め、本社と熊本のメンバーが頻繁にコミュニケーションを取りながら業務を進めています。

シキノハイテック 電子制御技術部 吉田次長

くま大インキュを通じた連携も生まれています。熊本大学には専門的な解析を相談しに訪れたことがあり、インキュ紹介のベンチャー企業とは次世代の技術開発に向けた取り組みを進めています。

インキュ内の入居企業からの受注もあるなど、施設内でのビジネスネットワークも広がっています。さらには、3Dコンソーシアムへの加入を通じて地場企業との関係も生まれました。

熊本進出の手ごたえ

進出から3年「想定通り、顧客が近くにいて手厚いフォローが可能になった。受注も増えている」というのが、シキノハイテックの率直な評価です。

当初は1名体制でスタートし、効果は半信半疑だったといいます。しかし地元メンバーの採用が進み5名体制となったことで、現場で対応できることが大幅に増えました。

熊本の現場でサポートが完結するようになり、本社のメンバーは新製品開発に集中できるようになりました。当初の想定以上の効果が、本社側にも生まれています。

「熊本にいるという付加価値がプラスに働いている。制度が許す限り、長く入居していたい」

シキノハイテック 熊本事業所 冨松

異業種との交流という予想外の収穫もありました。インキュ内のさまざまな企業と接することで刺激を受け、新たなビジネスのきっかけが生まれることもあるといいます。

同じ状況の企業様へ:シキノハイテックからのメッセージ

最後に、シキノハイテック熊本事業所、および、くまもと大学連携インキュベータ・朝長インキュベーションマネージャー(IM)にメッセージをいただきました。

「居心地が良いのでぜひ皆さんにも来てほしい。異業種との交流もあり刺激を受けられます。交通アクセスも良く、立地は抜群。熊本は福岡より便利で、5〜10年後にはさらに変わった景色になると思っています。早く進出すれば、仕事が広がる可能性は大きい。」

シキノハイテック 熊本事業所

「熊本進出の足掛かりを作りたい企業にとって、くま大インキュはオフィス・レンタルラボとして最適な施設だと思います。スモールスタートで熊本に根を張り、将来的な拠点拡大を見据えた第一歩として活用していただきたいです。」

くまもと大学連携インキュベータ 朝長インキュベーションマネージャー

まとめ

「顧客の近くにいたい」という、シンプルな判断から始まったシキノハイテックの熊本進出は、検討開始から5ヶ月で実現し、3年で5名体制へと成長しました。机一つから始められるくま大インキュだからこそ、このスピードが可能でした。

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本記事はくまもと大学連携インキュベータの協賛を得て、株式会社シキノハイテックへの取材および公開情報をもとにSemi-journalが作成しました。

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