パワーダイオードによる交流・直流変換:半波整流・全波整流の違い
パワーダイオード
パワーダイオードは、電流を1方向のみ流す「整流作用」を示すパワーデバイスです。
上図はpn接合ダイオードという種類のダイオードの例です。p側をプラス、n側をマイナスに電圧を印加すると電流が流れますが、n側をプラス、p側をマイナスとすると電流は流れません。この性質を「整流作用」と呼びます。
ダイオードの整流作用を利用することで、交流電源を直流電源に変換する「AC-DCコンバーター」を実現できます。
パワーダイオードによるAC-DCコンバーター
交流電源にダイオードを接続した例を考えてみましょう(交流電源の1端子をダイオードのアノード、1端子をカソードに接続する)。
交流電圧をダイオードに接続すると、順方向電圧が印加された場合のみ電流が流れます。つまり、パワーダイオードの整流作用により、交流の一部を取り出し、直流に近い形に変換できます。
この例では、交流のうちプラス側の電圧のみを取り出しているにすぎないため、直流としてはまだまだ使用できません。
半波整流と全波整流
パワーダイオードを利用したAC-DCコンバーター(交流-直流変換)には2つの回路が存在します。
- 半波整流
- 全波整流
それぞれの回路について解説していきます。
半波整流
半波整流は「ダイオード1つを利用し、交流電源の波形のうち、片方の極性のみを取り出す回路」です。
交流電圧をダイオードに接続すると、順方向電圧が印加された場合のみ電流が流れるため、片方の極性のみを取り出すことができます。このようにして得られた波形は、電圧が波打っていることから「脈流」と呼ばれます。これでは、電力供給が安定せず、電子機器の動作が安定しません。
そこで、実際のAC-DC変換ではコンデンサを利用することで脈流を直流に安定化しています。
- コンデンサの充電
- コンデンサの放電
電源電圧が最大に達すると、コンデンサは電源電圧と同じ電圧まで充電され(電荷が蓄積され)、負荷と並列に接続された状態を維持します。
電源電圧が低下すると、コンデンサが蓄えた電荷を放出し、負荷へ電流を供給することで電圧の急激な低下を抑えます。
コンデンサの充放電により、電源電圧の変動を平滑化し、より直流に近い波形を得ることが可能です。 ただし、完全な直流にはならず、わずかに電圧が変動します。この変動を「リップル電圧」と呼びます。
半波整流は交流電圧のうち、正の電圧のみを利用するため効率が低くなります。そのため、より効率的な整流方式として「全波整流」が用いられます。
全波整流
全波整流は「交流電圧の両極性(+と−の両方)を利用して、直流に変換する回路」です。ダイオード4つを利用したブリッジ回路を形成します。
半波整流は交流電圧のうち、正の電圧のみを利用するため効率が低くなりますが、全波整流は両極性を利用するため高効率な変換が可能です。全波整流の原理を見ていきましょう。
全波整流では、交流の正極・負極で順方向に動作するダイオードが異なります。重要なのは、どちらの極性の交流成分も整流され、負荷に流れる電流の向きが常に一定になることです。これにより、交流を直流に変換できます。
なお、全波整流でもコンデンサを用いることで、整流後の電圧を平滑化し、より安定した直流電圧を得ることが可能です。
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