超純水製造における脱気膜とは:役割・構造・原理
脱気膜とは:一次純水システムのガス除去
逆浸透膜(RO膜)を通過した水には、イオンや微粒子の大部分が除去されている一方で、溶存CO₂(二酸化炭素)をはじめO₂(酸素)やN₂(窒素)などの溶存ガスがそのまま残留しています。これらの溶存ガス、特に溶存CO₂を除去する役割を担うのが脱気膜です。
脱気膜とは「疎水性の中空糸膜を用いて、水中に溶け込んだガス成分だけを選択的に除去する装置」です。
これまでの前処理(砂ろ過・活性炭ろ過)やRO膜がろ過によって不純物を取り除いていたのに対し、脱気膜は気体と液体を分離する気液分離という異なる原理で不純物(ガス)を取り除きます。
溶存ガス除去の重要性
脱気膜が取り除く溶存CO₂・O₂・N₂は、実はそれぞれ除去する理由が異なります。中でも脱気膜がEDIの直前に設置されている最大の理由は、溶存CO₂への対策です。
溶存CO₂の除去
CO₂は電荷を持たない中性の分子であるため、イオンを阻止するRO膜の仕組みではほとんど捕捉されず、そのまま後段へ抜けてしまいます。
抜けたCO₂は水中でHCO₃⁻(炭酸水素イオン、重炭酸イオン)に変化することで、続くEDIのイオン交換樹脂による除去が可能になります。ただし、この変換・除去のプロセスはイオン交換樹脂の処理対象を増やし、EDIの負荷や消費電力を押し上げる要因になります。
そこで脱気膜が、CO₂がイオン化する前の段階でガスのまま取り除くことで、EDIに余計な負荷をかけずに済ませているのです。
溶存O₂の除去
一方、溶存O₂(酸素)の除去は、EDIの負荷対策とは別の意味を持ちます。水中に酸素が残っていると、酸素を利用して増殖する好気性菌の繁殖を招きやすくなるため、生菌数を抑える目的でも溶存酸素の低減が求められます。
溶存N₂の除去
N₂(窒素)については積極的に除去すべき明確な理由は少なく、脱気膜がガスの種類を選ばず一括して取り除く性質上、CO₂やO₂とあわせて副次的に除去される、という位置づけです。
このように脱気膜は、EDIの負荷軽減(CO₂対策)と、水質・微生物管理(O₂対策)という2つの役割を同時に果たしている工程だといえます。
脱気膜の構造:中空糸膜による気液分離
(出典:電装産業の資料を基に筆者作成)
脱気膜は水をはじく疎水性の中空糸膜(ストロー状の細かい膜)で構成されています。例えば、膜の内部(内側)に水を流し、外部(外側)を真空にすることで、水に溶け込んだCO₂・O₂・N₂などのガス成分だけを膜の外側へ選択的に取り除きます。
疎水性の膜は水分子そのものは通しませんが、ガス分子は膜を透過できるため、水と気体を混ぜることなく分離できます。この性質を利用し、大気圧よりも低い真空側へガス成分を引き抜くことで、水中の溶存ガス濃度を大きく下げることができます。
脱気膜の方式:内圧式と外圧式
脱気膜の方式には、膜の内部に水を流す「内圧式(Inside-out)」と、それとは逆に膜の外側に水を流す「外圧式(Outside-in)」の2種類が存在します。
外圧式は水が中空糸膜の外側全体に広く触れるため接触効率が高く、内圧式に比べて優れた脱気性能を発揮しやすいという特徴があります。一方、内圧式は水の流路がシンプルなぶん圧力損失を抑えやすいという利点があります。
超純水製造の現場では、水と膜の接触効率がより高く、優れた脱気性能を発揮する「外圧式」が主流として多く採用されています。
一次純水システムにおける脱気膜の位置づけ
脱気膜以外にも、真空脱気塔や窒素パージといった脱気方法は存在しますが、装置がコンパクトで連続運転に適し、既存のRO膜・EDIと組み合わせやすいことから、半導体プラントの一次純水システムでは膜方式による脱気が主流となっています。
RO膜でイオン・微粒子の大部分を除去し、脱気膜で溶存ガスを取り除いた水は、EDIへと送られます。脱気膜によってCO₂由来のイオン負荷があらかじめ取り除かれているため、EDIは残留イオンやシリカの除去という本来の役割に集中でき、一次純水システム全体としての処理効率が高まります。
まとめ:脱気膜の役割一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 溶存CO₂・O₂・N₂などのガス成分の除去 |
| 原理 | 疎水性中空糸膜による気液分離(真空引き) |
| 重要性 | 溶存CO₂を除去し、後段EDIの処理負荷を軽減 |
| 方式 | 内圧式(Inside-out)/ 外圧式(Outside-in、主流) |
| 設置位置 | RO膜の後段、EDIの前段 |
| 後続工程 | EDI(残留イオン・シリカの除去) |
※ 設備・原水水質・膜の種類によって性能は異なります
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