MOSFETのピンチオフとは:ドレイン電流飽和の原理
MOSFETのピンチオフとは
ピンチオフ(pinch off)とは「ドレイン電圧の増加に伴い、ドレイン近傍のチャネルが消滅し、電流値が飽和する現象」です。ピンチオフが発生する電圧をピンチオフ電圧Vpと呼びます。
下図はMOSFETの電流-電圧特性です。
ゲート電圧を高くするとドレイン電流が増加し、またドレイン電圧を上げると電流も増加します。ただし、あるドレイン電圧を超えると、電流はそれ以上ほとんど増えなくなるという特徴があります。
これは、ドレイン近傍の空乏層生成により、チャネルが消滅する「ピンチオフ」が発生するためです。ピンチオフが起こる電圧をピンチオフ電圧と呼びます。
ピンチオフ発生の原理
2.ピンチオフ:Vg>Vt, Vd = Vp
ドレイン電圧Vdが増加すると、ドレイン近傍のチャネルの電位が増加し、ドレイン近傍の空乏層が広がります。Vd=Vpとなるとドレイン近くのチャネルが消滅します。
3.飽和領域:Vg>Vt, Vd>Vp
ピンチオフ電圧以上では、ドレイン電圧の増加分はドレイン領域の増加に使われます。ドレインの空乏層厚は増大しますが、空乏層増加分よりもチャネル長が十分大きいため、飽和領域ではドレイン電流はほぼ一定になります。
注意していただきたいのは、ピンチオフは、単にドレイン領域近傍で反転層が形成される条件が満たされなくなったということにすぎません。ピンチオフが発生しチャネルが消失しても電流は遮断されず、流れ続けます。
ゲート電圧が閾値電圧よりも高ければ、ソース近傍で反転層が形成され、電子はソースから流入します。ピンチオフ点以降のドレイン側においてチャネルが消失していても、ドレイン側に大きな電界が存在するため、ソースから流入した電子はドレイン電極に向かって加速され通過します。
ピンチオフ以降では、ドレイン電圧が高くなってもドレイン側の空乏層厚が増大するだけで、ソース側の電子の流入に影響せず、飽和領域ではドレイン電流が一定となるのです。





