半導体のMOS構造とは:金属-酸化物(絶縁体)-半導体の接合とMOSFET

MOS構造とは

pn接合ではエネルギー障壁が形成され、この障壁によってキャリアの移動が制限されます。しかしpn接合で形成される障壁は、不純物によって決まるため自由に動かすことはできません。

この障壁を電圧によって外部から制御するために考えられた構造の1つがMOS構造です。

半導体のMOS構造とは

MOS構造(Metal-Oxide-Semiconductor structure)とは「半導体の上に絶縁膜(酸化膜)を介して金属電極を配置した三層構造のこと」です。現代のトランジスタ(MOSFET)の基本構造となっています。

MOS構造の本質は、半導体に直接触れずに電位だけを与える点にあります。

半導体に直接電極を接触させると電流が流れてしまい、表面のキャリア状態を純粋に制御することができません。絶縁膜を介することで、電流を流さずに電場だけを与え、半導体表面のエネルギー状態を制御できます。

MOSFETとは:動作原理・構造・応用例

MOS構造の動作:電圧印加

ここでは、p型半導体基板上にn型のソース(S)・ドレイン(D)を形成した、一般的なMOSFET構造を例に説明します。

MOSFETの構造と電流

重要なのは、MOS構造が「ソース−ドレイン間に電流を流すかどうか」を、ゲート電圧によって制御している点です。

ゲート電圧が印加されていない場合、ソース−基板間、基板−ドレイン間にはpn接合が存在し、ソース−ドレイン間は電気的につながっていません。

One Point

参考:pn接合には「電流を一方向にしか流さない(整流作用)」という性質があります。

  1. p型を正・n型を負として電圧印加:電流が流れる(順方向バイアス)
  2. n型を正・p型を負として電圧印加:電流は流れない(逆方向バイアス)

次に、MOS構造のゲートに正の電圧を印加した場合を考えてみましょう。

半導体のMOS構造における反転層形成

ゲート電圧を印加すると、酸化膜を介して半導体内部に電場が生じます。

この電場によって、p型半導体中に存在する少数キャリアである電子が半導体表面へ引き寄せられます。

その結果、半導体表面では電子密度が増加し、本来p型であった表面がn型の性質を示す状態になります。この表面層を反転層と呼びます。

MOS構造の本質は、電流を流さずに電場だけを与え、半導体表面のキャリア分布を変化させられる点にあります。酸化膜があることで、ゲート電極と半導体の間に電流は流れず、電界による制御のみが可能になります。

MOSFETにおけるON状態とOFF状態

反転層が形成されると、ソースとドレインはn型チャネルによって電気的に接続され、ソース−ドレイン間に電圧を印加すると電流が流れるようになります。
一方、ゲート電圧を印加しない場合には反転層は形成されず、ソース−ドレイン間に電圧を印加しても電流は流れません。

このようにMOS構造では、ゲート電圧によって「電流が流れる/流れない」を切り替えることができます。この性質により、MOS構造はトランジスタ(MOSFET)の心臓部として用いられているのです。

Semi-journalの企業スポンサー制度

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です