半導体加工における固定砥粒と遊離砥粒の違い
半導体加工における砥粒
半導体および半導体関連材料の切断・研磨では「砥粒」が重要な役割を果たしています。
半導体の切断・研磨では、半導体材料よりも硬い砥粒(砥石)が刃物として、材料を削ることで、切断や研磨が行われます。
半導体加工では切断・研磨どちらの工程でも砥粒が使用されます。切断・研磨の方式には砥粒の固定方法から以下の2つに大別されます。
- 固定砥粒
- 遊離砥粒
ここではワイヤーソーを例にして説明します。
固定砥粒方式
固定砥粒方式とは「砥粒(ダイヤモンドやアルミナ等)を工具の表面に固定して使う切削・研磨方法」です。
ワイヤーソーでは、切削用ワイヤーの表面に砥粒を固定することで、砥粒によって加工物を切削することが可能となります。
砥粒の固定方法としては、ワイヤー表面にニッケルなどの金属を電気化学的に析出(メッキ、電着)させ、その際に砥粒を金属中に物理的に埋め込む手法が一般的です。
遊離砥粒方式
遊離砥粒方式とは「砥粒(ダイヤモンドやアルミナ等)を切削工具に固定せず、液体などと一緒に供給することで切削・研磨を行う方法」です。
ワイヤーソーを例にすると、遊離砥粒方式では、ワイヤー自体に砥粒が固定されておらず、代わりにスラリー(砥粒を含んだ液体)をワイヤーと加工物の間に供給することで切削を行います。
この方式では、砥粒がワイヤーと加工物の間で自由に動きながら加工を行うため、工具の摩耗が少なく、微細な加工や繊細な材料にも適しています。ただし、砥粒の補充やスラリー管理が必要になります。
固定砥粒と遊離砥粒の比較
項目 | 固定砥粒 | 遊離砥粒 |
---|---|---|
砥粒の状態 | 工具の表面に固定 | スラリー中に分散 |
代表的な工具 | ダイヤモンドワイヤーソー 固定砥粒ラップパッド | ラッピング装置 研磨布+スラリーなど |
切削力・速度 | 高くて安定 (切削力が工具を通じて直接伝達) | 比較的低い (砥粒が流動的なので力が分散) |
加工精度 | 高精度 パターン加工や溝加工にも対応可能 | 表面仕上げに優れる 形状制御はやや困難 |
メンテナンス | 工具交換 | スラリー濃度管理 |
加工例 | Siインゴット切断 サファイア切断 | Siウエハー研磨 光学レンズ表面研磨 |
大まかに、高精度・高能率な切断には「固定砥粒」、なめらかな表面仕上げには「遊離砥粒」が有効です。一方、材料や精度、処理効率に応じて、最適な砥粒方式は異なります。切断・研磨したい対象物と必要な精度に応じて、適切な方式を用いることが重要です。
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