半導体精密加工の種類:機械・化学・電気・光学加工

半導体精密加工の種類

半導体製造は極めて微細な工程で構成されており、加工プロセスにも「超精密加工」が求められます。

下図は超精密加工の分類例です。

半導体精密加工の種類

半導体および関連材料の精密加工は大きく「機械加工・化学加工・電気加工・光学加工」に分類されます。

  • 機械加工
  • 工具で力を加えて削る、伝統的で高精度な加工。

  • 化学加工
  • 薬品で材料を溶かす、応力の少ない表面加工。

  • 電気加工
  • 放電や電解で削る加工。硬い材料や微細加工に強い。

  • 光学加工
  • レーザーや光で非接触加工。超精密に対応。

各精密加工について例を挙げながら解説します。

機械加工

機械加工とは:切削加工と砥粒加工

機械加工とは「工具を材料に力学的に作用させて、材料の表面を削ったり切ったりして、目的の形状に仕上げる加工方法」です。材料を「変形」または「削り取る(除去する)」ことで形を作ります。

機械加工の例は以下の通りです。

    刃物で材料を削り取る、代表的な機械加工法。

  • 切削加工
  • 刃物で材料を削り取る、代表的な機械加工法。

  • 砥粒加工
  • 砥粒(砥石や研磨剤)で材料を削る、高精度な仕上げ向け加工法。

機械加工は、ウェハ製造・部品加工・装置構成部材の仕上げなど、半導体製造のさまざまな工程で利用されます。代表的な用途は以下の通りです。

  • 切削加工:半導体製造装置の金属部品加工
  • 精密な金属フレームやアーム部品などを加工する際に使用されます。

  • 切削加工:石英ガラスやセラミック治具の粗加工
  • 切削で基本形状を作成後、他の工程で仕上げる場合があります。

  • 砥粒加工:シリコンウェハの鏡面研磨
  • ウェーハの平坦化や仕上げで使用されます。

  • 砥粒加工:高硬度材料(SiC基板など)の表面仕上げ
  • ダイヤモンドスラリーなどを使って高精度な研磨を行います。

このように、機械加工は「装置を作る側(部品加工)」と「素材を整える側(ウェハ・治具研磨)」の両方で重要な役割を果たしています。

化学加工

半導体の化学加工とは:エッチングとCMP

化学加工とは「薬品によって材料の表面を化学的に反応・溶解させて形状を加工する方法」です。物理的な力を使わず、材料を選択的に溶かして加工します。

化学加工の例は以下の通りです。

  • エッチング
  • 薬液やガスで材料を溶かし、パターンを形成する微細加工法。

  • CMP(化学機械研磨)
  • 化学反応と研磨を組み合わせた、表面平坦化のための技術(機械加工と化学加工のハイブリッド)。

化学加工は主に微細構造の形成や表面の平坦化など、半導体製造の中核工程で活用されます。代表的な用途は以下の通りです。

  • エッチング:配線やトランジスタの微細パターン形成
  • フォトレジストを使って選択的にエッチングし、ナノスケールの回路を作製します。

  • エッチング:酸化膜や金属膜の加工
  • 各種膜を必要な形に加工し、素子間の構造を構築します。

  • CMP:配線層の平坦化
  • 配線層ごとの凸凹を平らにし、多層配線を可能にします。

  • CMP:SOI基板や鏡面ウェハの表面仕上げ
  • 高精度な鏡面を得るための最終仕上げに使用されます。

このように化学加工は、ナノレベルでの微細加工や、膜・表面の品質制御に不可欠な技術です。

電気加工

半導体の電気加工とは:放電加工とイオンビーム加工

電気加工とは「電気的エネルギーを用いて材料を除去・変形する加工方法」です。

物理的接触なしに高精度な加工を行えます。導電性材料をはじめ、ナノスケールの微細加工にも対応できます。電気加工の代表例は以下の通りです。

  • 放電加工(electrical discharge machining)
  • 電極とワーク間に火花放電を発生させ、材料を局所的に溶融・除去する加工法。

  • イオンビーム加工(ion beam machining)
  • 加速されたイオンを照射し、材料表面を原子・分子レベルで削る微細加工法。

電気加工は、微細形状の形成や高硬度・難加工材の精密加工に用いられます。代表的な用途は以下の通りです。

  • 放電加工:半導体装置部品の精密微細加工
  • セラミックノズルや金属製マイクロパーツなど、複雑形状の非接触加工に適しています。

  • 放電加工:金型や射出成形部品の精密加工
  • 鋭角・深溝などの加工に強みがあり、工具摩耗の影響も抑えられます。

  • イオン加工:半導体デバイスの断面作製・修正
  • 微細パターンの一部加工や解析用断面の作製に用いられます。

  • イオン加工:マスクレス微細加工や表面改質
  • レジスト不要で高精度加工が可能で、ナノスケールの構造形成に有効です。

このように電気加工は、「工具の届かない精密領域」や「加工が難しい高硬度材」に対応できる先端加工技術です。

光学加工

半導体の光学加工:レーザー加工とは

光学加工とは「光(主にレーザーや紫外線)を用いて、材料を加熱・除去・反応させて加工する方法」です。非接触で微細な加工が可能で、主に高精度な微細加工に適しています。

光学加工の代表はレーザー加工です。

  • レーザー加工
  • 高エネルギーのレーザー光で材料を局所的に加熱・蒸発させて除去する加工法。

光学加工は、主にウェハ表面の微細パターン形成や局所的な改質に使われます。代表的な用途は以下の通りです。

  • レーザー加工:ウェハのダイシング(チップ分割)
  • 物理的な応力をかけずに、高精度にチップを切り出す手法として使われます。

  • レーザー加工:透明材料(石英など)への微細加工
  • 非接触かつ熱影響が少ないため、光学部品やマイクロ構造の形成に適します。

このように、光学加工は「微細パターン形成」や「高精度な非接触加工」が求められる半導体製造工程で重要な役割を担います。

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