切削加工とは:半導体業界における役割と切削加工理論
切削加工とは
切削加工とは「工作物(素材)から工具を使って不要な部分を削り取る加工法」です。英語では「machining(マシニング)」や「cutting」とも呼ばれ、製造業における重要な加工技術の一つです。
切削加工には様々な種類があります。以下が代表例です。
- 旋盤加工
- フライス加工
- 穴あけ加工
- 中ぐり加工
半導体の製造現場では、フライス盤や旋盤を用いた「バイトによる切削加工」はほとんど見られません。しかし、研削や研磨といった工程は、砥粒による微細な切削作用によって進行するため、切削理論との共通点があります。
この共通性を踏まえると、切削加工の基礎を理解しておくことは、半導体分野の加工を学ぶ上でも大いに意味があります。
半導体業界における切削加工

(出典:オークマ)
半導体産業では「製造装置用部品加工・研削・研磨・切断(ダイシング)」などの幅広い工程で、切削が活躍しています。
半導体業界における切削加工の例は以下の通りです。
- 製造装置部品の切削加工
- ウェーハ研削(例:バックグラインディング)
- ウェーハ切断(例:ダイシング)
真空チャンバーやフランジ、シャワープレートなど、装置部品の多くが金属切削で製作されています
ウェーハを薄くする工程では、砥粒による微細な切削(=研削)が行われます
チップを分割するダイシングでは、ブレード(砥石)による高精度な回転切削(=砥粒による切断)が用いられます
金属加工に加え、研削やダイシングも切削原理に基づくプロセスであり、半導体製造に欠かせない技術です。
切削加工の原理:せん断面モデル
切削による加工はせん断面モデルで説明されます。
ここでは、バイトによる工作物の二次元切削を考えます。
せん断面モデル(shear plane model, merchant model)は「切削加工中に、材料がある一つのせん断面(shear plane)を境に滑るように変形し、切りくずが形成されながら加工が進む」とする理論モデルです。
材料に作用する力と切削力のつり合い関係をもとに、以下のような切削加工の状況を理論的に予測することができます。
- 切削力の大きさや方向の予測
- 切りくずの厚みや形状の推定
- すくい角や逃げ角を考慮した工具設計の指針
- エネルギー効率や発熱の分析による加工効率の最適化
せん断面モデルは切削力の推定や工具設計において基本となる考え方であり、すくい角や摩擦の影響を理論的に捉えるための出発点として広く用いられています。
すくい角(Rake angle)
すくい角(rake angle)は「工具の切れ刃面と工作物(被削材)の表面との間の角度」です。切削方向から見た際に「刃が前に突き出している」度合いを表します。
すくい角には「正」と「負」があり、工具の傾きによって切削のしやすさや工具寿命に影響します。
- 正のすくい角
- 負のすくい角
切削抵抗が減り、切りくずが滑らかに排出されやすくなる。仕上げ面も良くなる傾向。
刃先が強くなり、工具寿命が伸びるが、切削抵抗は増える。
すくい角が変わると、せん断面の角度や切りくずの流れ方も変わるため、切削加工において非常に重要なパラメータです。
逃げ角(Relief angle)
逃げ角(Relief angle)「工具の逃げ面(すくい面とは反対側)が加工面と接触しないように設けられた角度」です。摩擦による工具摩耗を防ぎ、加工面の品質を保つために重要な役割を果たします。
- 逃げ角が小さすぎる
- 負のすくい角
工具が加工面とこすれて摩耗が進みやすく、加工面が荒れる原因になります。
工具先端の強度が低下し、欠けやすくなることがあります。
すくい角と同様、逃げ角も加工品質や工具寿命に大きな影響を与える重要な要素です。すくい角と逃げ角は互いに影響し合うため、加工条件に応じたバランスのとれた設計が求められます。
半導体業界で活躍する切削加工
半導体業界においても、製造装置の精密部品、パッケージング用の金型、冷却機構に用いられる放熱フィンなど、加工精度が要求される多くの部品が切削によって作られています。
製造装置用部品

(出典:トップ精工)
例えば、半導体製造装置のシャワープレートは切削加工によって作製されています。
数十μm単位の穴径精度や真円度が求められるため、工具選定や切削条件の最適化が不可欠です。
半導体パッケージ用金型

(出典:ローム・メカテック)
半導体パッケージング用の金型も、切削加工によって作製されています。
高精度なキャビティやゲート構造を短期間で加工できるため、試作や多品種少量生産に適しています。
このように、切削加工は高精度・高難度の加工にも柔軟に対応できる手法として、半導体産業で広く活用されています。
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