知っておきたい半導体メモリの主要メーカー|DRAMとフラッシュメモリの違いと現状

本コラムは、半導体メモリに詳しいエンジニア・東急三崎口さんにご協力いただきました。普段はこちらのブログで発信されています。
半導体メモリを作っている会社
半導体メモリを製造している企業は世界でも数社しかなく、非常に競争の激しい業界です。代表的なメモリはDRAMとフラッシュメモリに分けられます。
DRAMを作っている会社
DRAMは1966年に考案され、50年以上の歴史を持つ半導体メモリです。現在、DRAMを製造している主要メーカーは次の3社に絞られています。
・Samsung(韓国)
・SK hynix(韓国)
・Micron(アメリカ)
この3社で世界シェアの約9割を占めており、まさに「超寡占市場」です。かつては日本企業(東芝、日立、NEC、三菱電機、沖電気、富士通など)も製造していましたが、価格競争と市況の悪化により撤退し、2012年にエルピーダメモリが倒産してからは海外勢だけが生き残っています。
フラッシュメモリを作っている会社
フラッシュメモリは1980年代に登場した比較的新しいメモリで、主流はNAND型フラッシュメモリです。主要メーカーは以下の5社です。
・Samsung(韓国)
・SK hynix(韓国)
・Micron(アメリカ)
・SanDisk(アメリカ)
・キオクシア(日本)
DRAMと違い、参入企業が多く競争は分散しています。日本メーカーのキオクシアは、東芝のメモリ事業から独立した企業で、現在も世界有数のNANDメーカーです。特徴的なのは、DRAMメーカーはNANDも作る一方、SanDiskとキオクシアはNAND専業である点です。
韓国メーカーの強さ
SamsungとSK hynixの2社は、DRAM市場で半分以上のシェアを持ち、NANDでも常に上位に位置しています。韓国政府は半導体を国家戦略産業と位置づけており、財閥グループの資金力と国の後押しが競争力の源泉です。
特にSamsungは、スマートフォンやサーバーなど自社製品でも大量にメモリを使用しており、需要と供給の両面で優位性を持っています。この「自社で使い、自社で作る」モデルは、他国メーカーにはない強みです。
激しい競争と巨額投資
半導体メモリ業界は、およそ2年ごとに新世代製品が登場するスピード競争の世界です。他社よりも早く新製品を市場投入できなければ、すぐにシェアを失ってしまいます。
さらに、研究開発だけでなく、製造装置や工場への投資が莫大で、1つの最新工場に数兆円単位の資金が必要です。設備投資に耐えられる体力を持つかどうかが、参入できる企業の条件になっています。
業績の波
メモリ業界は市況の変動が激しく、好況期には売上の30%以上が利益となる一方、不況期には赤字転落することも珍しくありません。Samsungのような巨大企業ですら、メモリ価格が下落すると一気に赤字を計上します。
つまり、巨額投資を続けながらも、常に市況の波に翻弄される構造にあり、経営の難易度は非常に高いのです。日本から唯一残るキオクシアも、この荒波の中で生き残りをかけています。
今後の注目点
今後の焦点は次の2つです。
①中国メーカーの台頭
アメリカの輸出規制を背景に、中国は自国生産を強化しています。現状では上位に食い込めていませんが、技術が追いつけば市場に大きな影響を与えるでしょう。
②フラッシュメモリの再編
NAND分野は参入企業が多いため、需要低迷が続くと業界再編が進む可能性があります。特に、中堅メーカーが淘汰され、さらに寡占が進むシナリオも考えられます。
こうした動き次第で、今後のメモリ業界の勢力図は大きく変わる可能性があります。
まとめ
半導体メモリは、世界でもわずかな企業しか作れない高度な製品です。DRAMは韓国と米国の3社、フラッシュメモリは5社体制で競争が続いています。
巨額投資と市況変動にさらされる厳しい業界ですが、スマホからサーバーまであらゆるデバイスを支える不可欠な存在です。