超純水の製造プロセス:前処理・一次純水・二次純水のしくみ

超純水の製造プロセス

半導体製造に使われる超純水は、工業用水や水道水をそのまま使うことはできません。原水から超純水になるまでには、複数の処理工程を経て段階的に不純物を除去していきます。

超純水の製造プロセス:前処理・一次純水システム・二次純水システム

超純水の製造は「前処理 → 一次純水システム → 二次純水システム」の3段階で構成されます。各段階で除去対象が異なり、段階的に純度を高めていきます。

段階 主な処理技術 主な除去対象
前処理 砂ろ過・活性炭 濁り・塩素・大きな有機物
一次純水システム RO膜・脱気膜・EDI イオン・シリカ・溶存ガス・微粒子(大部分)
二次純水システム UV・IER・UF膜 微量有機物・残留イオン・ナノ微粒子・細菌

※ 設備・原水水質によって構成は異なります

なお、超純水製造システムは各社様々であり、上記は一例です。各工程について、説明していきます。

前処理:RO膜を守るための粗ごみ除去

前処理の目的は「後段の精密な膜(RO膜)を詰まりや劣化から守ること」です。砂ろ過と活性炭の2段階で、原水中の粗大不純物を取り除きます。

砂ろ過

超純水の前処理システム:砂ろ過

砂ろ過とは「砂の層に原水を通すことで、泥・砂・コロイド粒子など、目に見えるサイズの濁り成分を物理的に除去する手法」です。

後段の活性炭やRO膜への負荷を減らす「一番最初のフィルター」です。

砂ろ過とは:超純水製造における粗大粒子ろ過とバックウォッシュ

活性炭

超純水の前処理システム:活性炭ろ過

活性炭を利用したろ過では、活性炭の多孔質表面に不純物を吸着させ、塩素・クロラミン・有機物を除去します。

特に塩素はRO膜のポリアミド素材を酸化・劣化させるため、RO膜の手前で必ず除去する必要があります。

活性炭ろ過とは:超純水製造における役割

一次純水システム:99%の不純物を除去する

一次純水システムでは、逆浸透膜(RO膜)・脱気膜・EDI(電気式脱塩)の3つの技術を組み合わせ、水中の大部分のイオン・シリカ・溶存ガスを除去します。

逆浸透膜(RO膜)

逆浸透と通常浸透の違い:超純水の製造方法

逆浸透膜(RO膜)は、水分子のみを通過させ、イオンや不純物を阻止する半透膜です。高濃度側(不純水)に人工的な高圧をかけることで、浸透圧に逆らって水分子だけを膜の反対側(純水側)に押し出す現象を「逆浸透」と呼びます。

この技術によるイオン除去率は95〜99%程度に達します。

なお、通常浸透とは、濃度の異なる液体を半透膜で隔てた際、濃度を均一にしようとする自然な力によって、低濃度側(純水)から高濃度側(不純水)へ水が移動する現象を指します。

逆浸透膜(RO膜)とは:超純水製造に欠かせないろ過膜

脱気膜

RO膜処理後の水には、溶存CO₂(二酸化炭素)をはじめ、O₂(酸素)やN₂(窒素)などの溶存ガスが残留しています。このうち溶存CO₂はEDIの処理負荷を著しく増大させる原因となるため、EDIの前段に設置した脱気膜によって、これらのガス成分を一括して除去します。

中空糸膜による脱気のメカニズム

脱気膜は水をはじく疎水性の中空糸膜(ストロー状の細かい膜)で構成されています。例えば、膜の内部(内側)に水を流し、外部(外側)を真空にすることで、水に溶け込んだCO₂・O₂・N₂などのガス成分だけを膜の外側へ選択的に取り除きます。

中空糸膜による脱気の原理:内圧式と外圧式の違い

脱気膜の方式には、上の図のように膜の内部に水を流す「内圧式(Inside-out)」と、それとは逆に膜の外側に水を流す「外圧式(Outside-in)」の2種類が存在します。

超純水製造の現場では、水と膜の接触効率がより高く、優れた脱気性能を発揮する「外圧式」が主流として多く採用されています。

超純水製造における脱気膜とは:役割・構造・原理

EDI(電気式脱塩)

電気式脱塩(EDI)・電気式脱イオン装置の動作原理

EDI(Electrodeionization)は「イオン交換樹脂とイオン交換膜、電気の力を組み合わせた、連続式の純水製造方法」です。薬品を使わずに樹脂を自動再生しながら、RO膜で取りきれなかった残留イオンやシリカを限界まで除去します。

イオン交換樹脂を陽イオン交換膜・陰イオン交換膜で挟んだセルに直流電圧をかけることで、水中のイオンを電気的に分離・濃縮します。さらに、この過程でわずかに解離した水(H⁺・OH⁻)が樹脂の交換基に入り込むことで、樹脂が自動的に再生され続けるのがEDI最大の特徴です。

この自動再生の仕組みにより、薬品を使った再生作業が不要になり、ランニングコストと廃液処理の削減につながっています。

EDI(電気式脱塩)とは:役割・構造・原理

二次純水システム:超純水への最終仕上げ

二次純水システム(ポリッシングシステム)では、UV・IER・UF膜の3段階で残留した微量不純物を極限まで除去し、比抵抗値18.2 MΩ·cmの超純水に仕上げます。

紫外線(UV)照射

紫外線(UV)照射によるTOCの分解と超純水製造

紫外線照射では、波長185 nmの紫外線を照射することで、一次純水システムで除去しきれなかった微量有機物(TOC)を光化学反応によりCO₂とH₂Oに分解します。

同時に波長254 nmのUVによる殺菌効果も得られます。UV照射後に生成したCO₂やイオンは、後段のIERで除去します。

超純水製造における紫外線(UV)照射:役割・構造・原理

イオン交換樹脂(IER)

イオン交換樹脂の原理:カチオン交換樹脂・アニオン交換樹脂

IER(Ion Exchange Resin)による高純度化とは「樹脂に固定されたH⁺・OH⁻と水中の残留イオンを交換することで、金属イオン・アニオンをpptレベルまで除去する方法」です。

UV照射で生じたCO2は、水中でHCO3-(重炭酸イオン)などの陰イオンに変化するため、他の陰イオンと同様にIERで除去できます。このようにして、UV照射で分解された有機物由来のイオンもここで取り除かれ、比抵抗値が18.2 MΩ·cmに近づきます。

限外ろ過膜(UF膜)

UF膜(Ultrafiltration Membrane)は、ユースポイント直前の「最後の砦」です。

限外ろ過膜(UF膜)の原理と超純水

孔径数nm〜数十nmの膜でナノ微粒子・細菌・コロイドを物理的に除去し、超純水の微粒子管理値(50 nm以上で1個/mL以下)を担保します。

二次純水システムを通過した水が「超純水」です。ユースポイントで使われなかった水は、純度を維持するため一瞬も滞留させずにタンクへ循環させます(デッドレグ対策)。

まとめ:超純水製造フローの全体像

工程 技術 主な除去対象
前処理 砂ろ過 濁り・コロイド粒子
活性炭 塩素・クロラミン・有機物
一次純水システム RO膜 イオン・有機物・微粒子(大部分)
脱気膜 溶存CO₂・溶存酸素
EDI 残留イオン・シリカ
二次純水システム UV照射 微量有機物(TOC)・細菌
IER 残留イオン(pptレベルまで)
UF膜 ナノ微粒子・細菌・コロイド

※ 設備・原水水質によって構成は異なります

各処理技術の詳細な仕組みについては、それぞれの記事で詳しく解説します。

次の講座

砂ろ過とは:超純水製造における粗大粒子ろ過とバックウォッシュ
砂ろ過とは

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