裏面照射型CMOSイメージセンサーとは?原理と構造
CMOSイメージセンサーの種類
CMOSイメージセンサーは大きく2種類に分類されます。
- 表面照射型CMOSイメージセンサー(FI CIS)
- 裏面照射型CMOSイメージセンサー(BI CIS)
フォトダイオードの直上に配線層があるイメージセンサ―。配線により入射光が散乱され、感度が低下する。
フォトダイオードの直下に配線層があるイメージセンサ―。配線により入射光が散乱されず、高感度。
表面照射型イメージセンサの構造
表面照射型イメージセンサ―のSEM像を示します。
イメージセンサーは、レンズで集めた光をフィルターで色ごとに分離し、フォトダイオードで電荷に変換・転送することで光を電気信号に変換しています。
- マイクロレンズ
- カラーフィルタ
- 配線(転送回路)
- フォトダイオード
が層状に積み重なっていることが確認できます。
光を感知するフォトダイオード直上に配線が存在しており、光が散乱されることから感度が低下する課題があります。
そこで開発されたのが裏面照射型CMOSイメージセンサー(BI CIS)です。
裏面照射型の構造
表面照射型と裏面照射型CISの断面SEM写真を見てみましょう
- 表面照射型CMOSイメージセンサー(FI CIS)
- 裏面照射型CMOSイメージセンサー(BI CIS)
フォトダイオードの直上に配線層が存在する構造。配線金属により入射光が反射され、フォトダイオードに到達する光が少なくなり、感度が低下します。
フォトダイオードの直下に配線層が存在する構造。配線金属により入射光が散乱されず、FI CISよりも高感度なCISです。
BS CISの登場により、一眼カメラなどのプロ用途カメラ市場へもCMOSイメージセンサーが普及しました。
メリット/デメリット
FI CISとBI CISのメリット/デメリットを表にまとめました。
表面照射型 | 裏面照射型 | |
---|---|---|
感度 | ×低い | 〇高い |
ノイズ | 〇低い | ×高い |
コスト | 〇安い | ×高い |
BS CISは高感度ですが、ノイズが増えてしまう課題があります。また工程が複雑になりコストが上昇します。
ノイズが増える理由
裏面照射型では、Si基板(単結晶)とSi酸化膜(非晶質)の界面が2箇所に増えるため、ノイズが増加します。
Si(単結晶)とSiO2(非晶質)は構造が異なるため、界面に「ダングリングボンド」と呼ばれる未結合手が存在します。
ダングリングボンドは界面準位を形成し、フォトダイオードで発生した電子正孔対を捕獲するためノイズの原因となります。
表面照射型は界面が1箇所ですが、裏面照射型は界面が2箇所に増えるためノイズが増加します。
裏面照射型の製造工程
BI-CISは「Si基板にフォトダイオード・配線を形成した後、ひっくり返し、シリコン基板を研磨、カラーフィルター・オンチップレンズを乗せることで製造」されています。
フォトダイオードに入射光を導入するため、Si基板を薄くする必要があります。Si基板は赤外光に対し透明であり、また薄くすると短波長の光の透過率も向上します。
Si基板を均一かつ薄く研磨する工程が必要なため、裏面照射型は表面照射型よりも製造コストが上昇します。