バイポーラトランジスタ(BJT)とは:動作原理・構造・応用例

BJTとは

BJT

BJT(Bipolar Junction Transistor)は「n型およびp型半導体を3つ用い、2つのpn接合を組み合わせたトランジスタ」です。

BJTは「ベース(B)」「エミッタ(E)」「コレクタ(C)」の3端子で構成され、ベース電流の大きさでエミッター-コレクタ間の電流を制御します。

小さなベース電流IBが流れると、その数十~数百倍のコレクタ電流ICが流れます。これがBJTの増幅作用です。

トランジスタとは何か?

動作原理

ここではNPN型BJTを例に説明します。

ベース-エミッタ間電圧(VBE)を印加しない場合

BJT 動作原理

ベース-エミッタ間電圧を印加しない場合、コレクタ側のpn接合に逆バイアスが印加された状態のためコレクタ電流IBは流れません。

NPN型BJTはPN接合とNP接合を直列に接合した回路と考えられるため、エミッタ-コレクタ間に電圧をかけても逆バイアスのため電流は流れません(pn接合の整流作用)。

pn接合の電気特性:順方向・逆方向バイアス

ベース-エミッタ間電圧(VBE)を印加した場合

BJT 動作原理

ベース-エミッタ間電圧VBEを印加すると、エミッタ-コレクタ間にコレクタ電流ICが流れ始めます。BJTの増幅作用の原理は以下の通りです。

  1. ベース-エミッタ間電圧VBEを印加すると、エミッタの電子がベースへ移動し正孔と再結合します。これがベース電流IBです。
  2. ベース電圧に引かれる形でエミッタから注入される電子の多くはベースを通過し、大きなコレクタ電流ICが流れます。
  3. つまり、小さなベース-エミッタ間電圧を印加しベース電流IBを流すことで、より大きなコレクタ電流ICを制御しています。これがBJTの増幅作用です。

なお、実際のデバイス構造ではベースが極めて薄く作られています。キャリアの拡散長さよりもベース厚さが十分に薄い為、エミッタの電子がベースを通過しやすい構造となっています。

電流増幅率α

BJTの電流増幅率αはエミッタ電流IEに対するコレクタ電流ICで定義されます。

α=IC/IE

  • α:電流増幅率
  • IE:エミッタ電流
  • IC:コレクタ電流

前述の通り、エミッタから注入された電子のほとんどはコレクタに流入することから、α=0.95-0.99と1に近しい値となります(ベースはキャリア拡散長に対し十分薄い為)。

電流増幅率は一般に100-500ですが、大きいものでは100以上の高い増幅率を有するトランジスタも存在します。

バンド図

BJT バンド図

左図は電圧を印加しない場合のBJTのバンド図です。電圧を印加しない場合、各pn接合には空乏層生成による内蔵電位が発生し、エネルギー障壁が生じていることが分かります。すなわち、電流は流れません。

ベース-エミッタ間電圧VBEおよびエミッタ-コレクタ間電圧VECを印加した場合、エミッタ-ベース間のエネルギー障壁が低下します。エミッタの多数キャリアである電子は拡散により障壁を超え、ベース領域を拡散しコレクタに到達します。すなわち、電流が流れます。

なお、ベース-コレクタ間電圧VECはコレクタ側のpn接合に逆バイアスを印加することになるため電子はドリフトされコレクタ側に向かいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です