半導体の外方拡散・内方拡散
外方拡散・内方拡散とは
半導体シリコンウェーハにはB・P原子などのドーパントや酸素原子が含まれています。
ウェーハ中の原子が熱処理などによって、外側に拡散・放出されることを外方拡散、ウェーハ外の原子を内側に拡散で取り込むことを内方拡散と呼びます。
外方拡散はウェーハ外の雰囲気中への原子の放出だけでなく、基板からエピタキシャル成長膜へのドーパント・酸素の拡散も含みます。
内方拡散も同様に、接合した基板やエピ膜からのドーパント・酸素などの拡散も含んでいます。
外方・内方拡散はDZ層の形成などに活用される一方、ドーパントの拡散によるデバイス特性の劣化など、プラスにもマイナスにも働く現象です。
外方拡散の例:DZ層の形成
酸素の外方拡散はDZ層の形成に有効活用されています。
CZウェーハ中の酸素析出に代表される微小欠陥は、表面数μmのデバイス活性層に存在すると、局所的に電気特性が悪化するため有害です。
そこで、Siウェーハを例えば1200℃・窒素中で熱処理を行うと、酸素が外方拡散し、表面に酸素析出が全くない層が形成します。これをDZ層と呼びます。
DZウェーハでは、表面が無欠陥のため高品質なデバイスを形成できる事に加え、デバイスプロセス中に表面に付着・内方拡散した金属不純物を酸素析出(BMD)でゲッタリングすることが出来る利点があります。
デバイス特性が向上する高品質なSiウェーハを、熱処理による外方拡散を利用し作製したポジティブな例です。
外方拡散の例:オートドーピング
ドーパントの外方拡散は、基板へのエピタキシャル成長時に問題となります。
Siウェーハへのエピ成膜は、エピ反応ガスを流しながら基板を1000-1200℃程度に加熱することで行われます。
加熱基板中のドーパントが外方拡散により気相に放出され、エピ層中に再度取り込まれる現象を「オートドーピング」と呼びます。
オートドーピングが発生すると、エピ層中の抵抗率・抵抗率面内分布が悪化することから問題となります。
基板のドーパント濃度が高く(抵抗率は低い)、エピ膜のドーパント濃度が低い(抵抗率は高い)場合に発生しやすい現象で、外方拡散が悪影響となる例です。
内方拡散の例:酸素雰囲気熱処理
例えば、酸素雰囲気中でSiウェーハを熱処理すると、ウェーハ中に酸素が内方拡散することが知られています。応用例として、Siウェーハの酸素濃度を維持したままVoid消滅熱処理に利用できることが報告されています。
CZ法にて、原子空孔が優勢となる条件で作製した単結晶Siには多数のVoidが含まれています。Void欠陥はH2またはAr雰囲気下、1200℃ 1hの熱処理で消滅可能であることが知られています。
一方、Siウェーハ表層では、酸素の外方拡散により酸素濃度が低下し、ウェーハの機械的強度が低下してしまいます。そこで、SiウェーハをO2雰囲気中で熱処理(RTP)を行うことで、酸素の内方拡散により基板中の酸素濃度を維持・増大させ、表面のVoidを消滅させることが出来ます。
比較例のAr-RTPと比べ、O2-RTPでは基板中の酸素濃度を増大させることが出来ており、内方拡散を活用した例と言えます。