【ドライ/ウェット】エッチング工程とは?原理と装置の構成

エッチング工程とは?

エッチング 半導体製造工程

エッチングは「薬液やプラズマなどのイオンにより、ウェーハの不要部を除去することでパターンを形成する工程」です。

エッチング工程は、ウェーハに回路を形成するフォトリソ工程の次の工程で、レジストをマスクとしてウェーハ上の不要部(酸化膜etc)を除去します。続くレジスト除去工程でレジストは取り除かれ、エッチング工程で形成したパターンがウェーハに刻まれます。

エッチングの種類

ウェット ドライエッチング

エッチングには「液体を使用するウェットエッチングと、ガスまたはプラズマを使用するドライエッチングの2種類」があります。

各エッチングの原理と特徴を詳しく見ていきましょう。

ウェットエッチング

ウェットエッチングは「酸・アルカリ溶液とウェーハとの化学反応で、不要部を除去する方法」です。

洗浄工程と同様に、複数枚のウェーハを薬液槽に浸すことでエッチングを行います。

ウェットエッチングの原理

ウェットエッチングは、薬液と被エッチング膜の化学反応により不要部を取り除きます。以下に代表的な被エッチング膜との化学反応を示します。

単結晶・多結晶Si

酸化
Si+HNO3+H2O→SiO2+HNO2+H2

溶解
SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O

SiのエッチングはHNO3+HFの混酸で行います。硝酸はSiの酸化反応、フッ酸は生成したSiO2の溶解反応を行います。酸化・溶解を繰り返すことでSiが溶解・除去されていきます。

酸化膜(SiO2)

溶解
SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O

Si2のエッチングはフッ酸(HF)で行います。SiO2がHFと反応し、水溶性のH2SiF6が生成することで溶解します。

窒化膜(Si3N4)

酸化
3Si3N4+4H3PO4+18H2O
→4(NH4)3+9SiO2

溶解
SiO2+4H++4e-→Si+2H2O

Si3N4のエッチングは熱リン酸(H3PO4, 80℃)で行います。熱リン酸でシリコンが酸化されSiO2が生成した後、溶解します。

ウェットエッチングの特徴

ウェットエッチングは以下の特徴があります。

等方性エッチング
  • 等方性
  • 面方位によらず、全方向に同一の速度でエッチングが進行します。微細パターンの加工には不向きです。

  • 生産性が高い
  • 一度に複数枚のウェーハを処理可能で、生産性が高いです。品質も安定しやすい事もメリットです。

  • 薬液・装置が安価
  • 薬液が安価で経済的です。装置構成もシンプルで、ランニング・イニシャルコストに優れます。洗浄装置の薬液をエッチング液にして実施します。

半導体洗浄装置とは?

ドライエッチング

ドライエッチング 種類

ドライエッチングは「反応性ガスやプラズマで生成したイオンを用い、ウェーハ上の不要部を除去する方法」です。

ドライエッチングはその方式により以下の3つに分けられます。

  1. ガスエッチング
  2. スパッタエッチング
  3. 反応性イオンエッチング(RIE)

現在、一般にドライエッチングと言えば「反応性イオンエッチング」を指します。

ガスエッチングの原理

反応性ガスエッチング

ガスエッチングは「化学エッチングガス(蒸気)と被エッチング材料との化学反応により不要部を除去する方法」です。

例えば、エッチングガスにフッ酸蒸気(HF)を用いることで、ウェーハ上の酸化膜を除去することが可能です。

スパッタエッチングの原理

スパッタエッチング

スパッタエッチングは「プラズマによって生成したイオンをウェーハに衝突させることで、物理的に不要部を除去するエッチング」です。

ArやHeなどの不活性ガスを用い、プラズマを発生させることで生成したAr+やHe+イオンを基盤に照射することで、基盤を物理的にエッチングします。

反応性イオンエッチング(RIE)の原理

反応性イオンエッチング

反応性イオンエッチングは「プラズマによって生成したイオンによる物理エッチングと、ラジカルによる化学エッチングで不要部を除去する方法」です。

イオン化した粒子が衝突することによる物理エッチングに加え、反応性の高いラジカルと不要部(酸化膜など)が反応し、揮発することでエッチングが進行します。ドライエッチングと言えばこのRIEそ差すことがほとんどです。

コメント

  1. 匿名 より:

    ネット記事などを見ていると、コンダクタエッチングや絶縁膜エッチングなどさまざまな名前のエッチングの記載がありますが、これらはエッチングのなかに複数の工程や用途があるということでしょうか。
    メーカーによって、絶縁膜ではシェアが高いが、コンダクタではシェアが低いなど色々あるようですが、技術的な違いが大きいということなんでしょうか。
    ご回答のほどよろしくお願いいたします。

    1. semi-journal より:

      コメントありがとうございます。以下、回答いたします。

      エッチングにはエッチング対象となる物質によって名前が異なります。

      • コンダクターエッチング
      • メタルやシリコンなど、半導体デバイスにおいて電気的に活性な物質のエッチング。わずかなバラツキでも、デバイスに悪影響を与えかねないためより精密性が求められる。

      • 絶縁膜エッチング
      • 絶縁膜のエッチング。絶縁膜はより強力な原子結合を有するため、高いエネルギーを必要とする。

      仰る通り、絶縁膜とコンダクタでは各社シェアが異なるようです。この点は対象とする材料が違うエッチングにおいて、技術的な違いが大きいのだと思います。

      技術的な違いについては、調査した上でご共有したいと思います。

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