スケーリング則(デナード則)とは:MOSFETの微細化
スケーリング則とは
半導体のスケーリング則とは「MOSFET(トランジスタ)の微細化によって、トランジスタの高速化が可能になるという法則」です。
つまり、トランジスタは小さくすればするほど、性能も向上するという事実を理論的に示したのがスケーリング則です。
提唱者であるロバート・デナードの名前から、デナード則やMOSFETスケーリングなどとも呼ばれます。
スケーリング係数と高性能化
MOSFETの微細化による高性能化は「スケーリング係数(k)」を基準として考えます。
デバイス寸法と電源電圧を1/kに縮小し、不純物密度をk倍にすると、MOSFETは以下の表の通り高性能化します。
パラメーター | スケーリング係数 |
---|---|
電圧V | 1/k |
電流I | 1/k |
ゲート容量CG=εA/tox | 1/k |
ゲート遅延時間CG/I | 1/k |
ゲート消費電力VI | 1/k2 |
デバイス面積A | 1/k2 |
消費電力密度VI/A | 1 |
線抵抗RL=ρL/Wt | k |
相対的な電圧降下IRL/V | k |
配線遅延時間RLCG | 1 |
電流密度I/A | k |
電界E | 1 |
スケーリング例
例として、スケーリング係数k=2、すなわちMOSFETの寸法を1/2とした場合を考えてみましょう。
1.寸法と電圧のスケーリング
寸法と電圧を1/2とすると、内部電界はスケーリング前と同じになります。
2.面積のスケーリング
縦・横の寸法を1/2とすると、面積は1/4になります。
3.消費電力のスケーリング
ソース・ドレイン間を流れる電流値も1/2となるため、MOSFETのIV特性が1/2にスケーリングされます。消費電力P=I×Vであることから、スケーリングによる消費電力は1/2×1/2=1/4となります。
つまり、微細化することでMOSFET1個の特性をそのままに、消費電力を1/4に抑えることが出来ます。これがMOSFETのスケーリングです。
4.消費電力のスケーリング
デバイス面積が同じと考えた場合、デバイスの合計消費電力は1/4×4=1であり、スケーリング前後で消費電力は変わりません。
つまり、消費電力を同じに保ったまま、MOSFETの密度を4倍にすることが可能です