半導体のバンド曲がり:原理と実例

半導体のバンド曲がり

バンドの曲がり

半導体と金属の接合や、半導体表面ではバンド構造が曲がります。この現象を「バンド曲がり」や「バンドベンディング」と呼びます。

バンド曲がりの原理は「接合界面や表面におけるキャリアのポテンシャルが異なり、ポテンシャル差が消失するまでキャリアが移動するため」です。

バンドが曲がる例として、以下の種類が挙げられます。

  • 金属-半導体接合
  • 表面準位
  • 表面吸着
  • 電圧印加

バンドベンディングの代表例として、金属-半導体接合と表面準位について解説します。

金属-半導体接合

金属半導体接合

上図は金属と半導体接合のバンド図です。接合界面でバンド曲がりが生じていることが分かります。

金属とn型半導体の接合を例に、バンド曲がりの原理を考えていきましょう。

金属とn型半導体のショットキー接合(Φm > Φs)

金属とn型半導体において、金属の仕事関数が、n型半導体よりも大きい場合、つまりΦm > Φsである場合を考えます。このような接合を「ショットキー接合」と呼びます。

ショットキー バンドの曲がり

1.接合前

仕事関数は「フェルミ準位EFと真空準位Evacのエネルギー差」として定義されます。この場合、半導体の伝導体の電子は金属の伝導電子よりも高いエネルギーを持っています。

半導体のバンド理論

ショットキー バンドの曲がり

2.接合直後

金属とn型半導体を接合すると、半導体の伝導電子が金属の伝導電子よりも高エネルギーなため(半導体の方がEFが大きい為)、接合界面近くの電子が金属に移動します。

この時、金属のフェルミ準位EF,mが上昇、半導体のフェルミ準位EF,sが下降します。両者のエネルギー差が無くなるまで電子は移動します。半導体にはイオン化したドナーが取り残されます。

ショットキー バンドの曲がり

3.接合後(平衡状態)

接合により電子が移動し、半導体が正・金属が負に帯電するため、界面に電気二重層が生成します。結果、半導体から金属への電界が発生します。

半導体のキャリア密度は金属よりも極端に低く、電子移動により生成する空乏層は半導体側に大きく広がります。

半導体に生じた空乏層・電界はエネルギー障壁として働くため、接合界面における半導体のバンドは上側に曲がります。

この様にして生じた電位差を「ビルトイン電圧」と呼びます。金属-半導体間の電位障壁となるため、金属から半導体方向の電流が流れにくくなります。これを「ショットキー接触」と呼びます。

金属とn型半導体のオーミック接合(Φm < Φs)

金属とn型半導体において、金属の仕事関数が、n型半導体よりも大きい場合、つまりΦm > Φsである場合を考えます。この様な接合を「オーミック接合」と呼びます。

オーミック バンドの曲がり

1.接合前

仕事関数は「フェルミ準位EFと真空準位Evacのエネルギー差」として定義されます。この場合、金属の伝導電子は半導体の伝導電子よりも高いエネルギーを持っています。

半導体のバンド理論

オーミック バンドの曲がり

2.接合直後

金属とn型半導体を接合すると、金属の伝導電子が半導体の伝導電子よりも高エネルギーなため(半導体の方がEFが大きい為)、接合界面近くの電子が半導体に移動します。

この時、金属のフェルミ準位EF,mが上昇、半導体のフェルミ準位EF,sが下降します。両者のエネルギー差が無くなるまで電子は移動します。

オーミック バンドの曲がり

3.接合後(平衡状態)

接合により電子が移動し、平衡状態に達すると、金属表面には正電荷が、半導体表面には電子が蓄積して負電荷が生じます。

ショットキー接合とは異なり、半導体からの電子移動がなく、ドナーがイオン化されないため電位障壁(空乏層)は形成されません。すなわち、半導体-金属界面にエネルギー障壁が掲載されないため、金属・半導体のどちらの方向からでも電流は流れます。

半導体表面は金属から伝導電子を受け取ったため、エネルギーは低下します。つまり、バンドは下方へと曲がります。

下図は接触前後の金属-n型半導体のバンド図です。金属-半導体界面に電位障壁が存在せず、このような接触をオーミック接触と呼びます。

オーミック バンドの曲がり

表面準位

表面準位とは、材料の表面に見られる電子状態のことです。

半導体表面または異種材料の界面では、半導体結晶の周期性が崩れ、化学結合を形成していない未結合手(ダングリングボンド)が存在します。未結合手は電子や正孔を捕獲することから、表面準位を形成します。

半導体の表面準位の存在がバンド曲がりを誘起します。

真性半導体の場合

表面準位によるバンド曲がりを理解するため、まずはじめに、真性半導体のバンド図を理解していきましょう。真性半導体の場合、表面準位によるバンド曲がりは生じません。

下図は真性半導体のエネルギーバンド図です。簡略化のため、表面準位のエネルギーバンドは半分が電子に占有され、表面準位のフェルミレベルEF(surf)はバルクの価電子帯・伝導帯の中間に位置すると仮定します。

表面準位 バンド

真性半導体の場合

バルクのフェルミ準位EF(bulk)と表面準位のフェルミ準位EF(surf)にエネルギー差がないことから、半導体バルク-表面間で電子移動は起こりません。

すなわち、バンド曲がりは発生しません。

n型半導体の場合

n型半導体の場合、表面準位の存在によりバンド曲がりが発生します。原理は以下の通りです。

n型半導体 表面準位

1.非平衡状態

n型半導体の場合、バルクのフェルミ準位EF(bulk)は真性半導体よりもより伝導帯に近い位置にシフトします。

つまり、n型半導体のフェルミ準位EF(bulk)は表面準位EF(surf)よりも大きい状態となるため、バルクから表面に電子移動が起こります。

n型半導体 表面準位

2.平衡状態

電子移動は、バルクと表面のフェルミ準位が等しくなる平衡状態となるまで起こります。

電子移動により、バルクのイオン化ドナーと負に帯電した表面準位により電気二重層が形成されます。結果、バルクから表面への電界が発生します。

バルクに生じた空乏層・電界はエネルギー障壁として働くため、接合界面における半導体のバンドは上側に曲がります。

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