半導体の電気的性質:p型半導体とn型半導体

原子構造の基本

半導体の電気特性を理解するには、電子殻とオクテット則の考え方が重要です。

  1. 電子殻
  2. 物質の電気的性質を決定する最外殻電子の考え方

  3. オクテット則
  4. 原子は最外殻電子が8個で安定化するという法則

この2つを学んだあとに、n型/p型半導体について解説します。

電子殻の考え方

原子 構造 電子殻

原子はプラスに帯電した原子核と、その周りにあるマイナスに帯電した電子から構成されます。電子は、化学物質の構造を決めたり、半導体の電気特性を決定する重要な粒子です。

原子核の周りには電子が収容される軌道が何重にも重なっており、電子殻と呼ばれています。エネルギー準位の低い順から、K殻、L殻、M殻となり、電子はK殻から順番に入っていきます。

電子殻が収容できる電子の最大数は決まっており、K殻:2個、L殻:8個、M殻:18個です。

価電子とオクテット則

価電子 オクテット則

一番外側の電子軌道(最外殻)に収容されている電子は「価電子」と呼ばれます。

マイナスの電子は、プラスの原子核の引力を受けいます。原子核から最も遠くに位置する価電子は、原子核からの引力が弱く、原子核との結びつきが弱く安定度が低いため、他の原子との反応性が高いです。

最外殻電子(最も外側の軌道の電子)は8個であると、原子・物質として安定に存在することが知られており「オクテット則」と呼ばれています。言い換えれば、原子は最外殻電子が8個になるように他の原子と反応します。

価電子の考え方とオクテット則を前提に、Siの電子構造について考えていきましょう。

Siの構造:真性半導体

シリコン 共有結合 真性半導体

原子番号14のSiは14個の電子を持ちます。最外殻電子であるM殻の電子数は「4個」になるため、オクテット則を満たさずSi原子単体は不安定です。そこで、Si原子は価電子を共有することで安定構造を作ります。

Siの場合、Si原子1つが4個の隣接するSi原子と1つずつ価電子を共有し、オクテット則を満たすことで安定化します。電子を共有することで原子同士が結びつくことを「共有結合」と呼びます。

このように生成した通常のSi結晶は「真性半導体」の性質を示し、半導体として使われることはほとんどありません。電子殻(電子軌道)は完全に電子で満たされているため、電子は動きづらく、電気抵抗が高いことから電気が流れないためです。

不純物半導体:n型とp型

Si単体は真性半導体のため電気を流しません。そこで、不純物半導体の登場です。

Siにホウ素(B)やリン(P)といった不純物をごく微量加えることで、電気抵抗率を劇的に下げることが出来ます。

微量の不純物を加えることを「不純物ドーピング(ドープ)」と言います。

n型半導体

シリコン n型半導体

n型半導体はSiにP(リン)をドープすることで得られます。リンの再外殻電子は5個であり、Siの結晶格子中に入り込むと「4つの電子は結合に使われ、電子は1つ余る」ことになります。

共有結合に使われない余った電子は高エネルギーであるため、結晶中を自由に動き回ります。つまりリンをドープすることでSiに電子(電気)が流れやすくなります。

通常のSi結晶よりも「マイナスの電子」が多いことから、ネガティブ(Negative)のnをとって「n型半導体」と呼ばれます。

p型半導体

p型半導体はSiにB(ホウ素)をドープすることで得られます。ホウ素の最外殻電子は3個であり、Siの結晶格子中に入ると「3つの電子はすべて結合に使われるが、共有結合には電子が1つ足りない」状態になります。

この余った空孔は、マイナスの電子が抜けた穴=プラスと捉えることが出来る為「ホール(正孔)」と呼ばれます。ホールも結晶中を動き回ることが出来るため、Siに電気が流れやすくなります。

通常のSi結晶よりも「プラスの正孔」多いことから、ポジティブ(Positive)のpをとって「p型半導体」と呼ばれます。

シリコン p型半導体 ホウ素

ホール(正孔)伝導の原理

p型半導体のホール伝導について詳しく見ていきます。

ホール伝導 原理

Siにホウ素(B)原子が混ざると、結合電子が足りずホールが生成します。ホールが存在する部分は共有結合を作らず不安定なため、近くの電子が移動しホールを埋めて結合を作ります。

正孔が埋まり共有結合を形成すると同時に、電子の抜け穴として新たな正孔が生成します。今度は、生成した正孔を埋めるため、新たな電子が移動し、また新たな正孔を生成します。

電子が正孔を埋め続けることで、正孔が動いているように見えることを「ホール伝導」と言います。これがp型半導体で電気が流れる仕組みです。

コメント

  1. wataruman より:

    再外殻→最外殻(2.オクテット則の下)

    1. semi-journal より:

      コメントありがとうございます。修正しました!

  2. T より:

    とても分かりやすかったです。
    解説にある図やイラストを大学の輪講に使用させていただくことは可能でしょうか。

    1. semi-journal より:

      T様
      はい、私的利用ですのでご自由にお使いください。
      その際、サイト名やurlも追記いただけると嬉しいです!

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