半導体のバンド構造:p型とn型
真性半導体のバンド構造
Siを例に真性半導体のバンド構造を考えます。
Siのバンドギャップは1.2eVであり、通常は抵抗率が高く電気を流しません。
外部から1.2eV以上のエネルギーを与えることで、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、電子正孔対が生成し電気を流すようになります。
1.2eVは温度にして約1万度と非常に大きなエネルギーです。光エネルギーに換算すれば1000nmより短い波長の光です。現実の半導体デバイスにおいてはあり得ない環境であり、真性半導体は非常に使いづらい材料です。
p型・n型半導体のバンド構造
そこで登場するのが、不純物ドープによるn型・p型半導体です。不純物を添加することにより、常温でも抵抗率が低く、電気を良く流すようになります。
では、n型・p型半導体のバンド構造はどうなっているのでしょうか。
n型半導体のバンド構造
リン(P)ドープSiを考えます。n型半導体では、Si結晶中にP原子由来の余剰な電子が存在します。
この電子は共有結合に関与せず余っていることから、P原子に弱く束縛されているだけであり、熱などのわずかなエネルギーで伝導電子(自由電子)として動き回ります。
バンド構造で考えると、P原子由来の電子はわずかなエネルギーで伝導帯に遷移することから、そのエネルギー準位は伝導帯のすぐ下にあると考えられます。この準位を、電子を与える準位という意味で「ドナー準位」と呼びます。
ドナー準位と伝導帯のエネルギー差はわずかであり、室温でも十分に伝導帯へ電子が遷移するため、n型半導体は室温でも電気を良く流します。
p型半導体のバンド構造
BドープSiを考えます。p型半導体では、Si結晶中にB原子由来の正孔が存在します。
プラスの電荷をもつ正孔は、マイナスの電子に対し引力として働きます。共有結合を作っている電子は、わずかなエネルギーを与えるだけで、正孔を埋めるように移動します。
バンド構造を考えると、B原子由来の正孔はわずかなエネルギーで価電子帯の電子を引き寄せるため、正孔のエネルギー準位は価電子帯のすぐ上と考えられます。この準位を「電子を受け取る準位」という意味で「アクセプター準位」と呼びます。
アクセプター準位と価電子帯のエネルギー差はわずかであり、室温で価電子帯の電子がアクセプタ準位に捕獲され、正孔が伝導することから、p型半導体は室温でも電気を良く流します。
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