半導体の電気的性質:p型半導体とn型半導体
原子構造の基本
半導体の電気特性を理解するには、電子殻とオクテット則の考え方が重要です。
- 電子殻
- オクテット則
物質の電気的性質を決定する最外殻電子の考え方
原子は最外殻電子が8個で安定化するという法則
この2つを学んだあとに、n型/p型半導体について解説します。
電子殻の考え方
原子はプラスに帯電した原子核と、その周りにあるマイナスに帯電した電子から構成されます。電子は、化学物質の構造を決めたり、半導体の電気特性を決定する重要な粒子です。
原子核の周りには電子が収容される軌道が何重にも重なっており、電子殻と呼ばれています。エネルギー準位の低い順から、K殻、L殻、M殻となり、電子はK殻から順番に入っていきます。
電子殻が収容できる電子の最大数は決まっており、K殻:2個、L殻:8個、M殻:18個です。
価電子とオクテット則
一番外側の電子軌道(最外殻)に収容されている電子は「価電子」と呼ばれます。
マイナスの電子は、プラスの原子核の引力を受けいます。原子核から最も遠くに位置する価電子は、原子核からの引力が弱く、原子核との結びつきが弱く安定度が低いため、他の原子との反応性が高いです。
最外殻電子(最も外側の軌道の電子)は8個であると、原子・物質として安定に存在することが知られており「オクテット則」と呼ばれています。言い換えれば、原子は最外殻電子が8個になるように他の原子と反応します。
価電子の考え方とオクテット則を前提に、Siの電子構造について考えていきましょう。
Siの構造:真性半導体
原子番号14のSiは14個の電子を持ちます。最外殻電子であるM殻の電子数は「4個」になるため、オクテット則を満たさずSi原子単体は不安定です。そこで、Si原子は価電子を共有することで安定構造を作ります。
Siの場合、Si原子1つが4個の隣接するSi原子と1つずつ価電子を共有し、オクテット則を満たすことで安定化します。電子を共有することで原子同士が結びつくことを「共有結合」と呼びます。
このように生成した通常のSi結晶は「真性半導体」の性質を示し、半導体として使われることはほとんどありません。電子殻(電子軌道)は完全に電子で満たされているため、電子は動きづらく、電気抵抗が高いことから電気が流れないためです。
不純物半導体:n型とp型
Si単体は真性半導体のため電気を流しません。そこで、不純物半導体の登場です。
Siにホウ素(B)やリン(P)といった不純物をごく微量加えることで、電気抵抗率を劇的に下げることが出来ます。
微量の不純物を加えることを「不純物ドーピング(ドープ)」と言います。
n型半導体
n型半導体はSiにP(リン)をドープすることで得られます。リンの再外殻電子は5個であり、Siの結晶格子中に入り込むと「4つの電子は結合に使われ、電子は1つ余る」ことになります。
共有結合に使われない余った電子は高エネルギーであるため、結晶中を自由に動き回ります。つまりリンをドープすることでSiに電子(電気)が流れやすくなります。
通常のSi結晶よりも「マイナスの電子」が多いことから、ネガティブ(Negative)のnをとって「n型半導体」と呼ばれます。
p型半導体
p型半導体はSiにB(ホウ素)をドープすることで得られます。ホウ素の最外殻電子は3個であり、Siの結晶格子中に入ると「3つの電子はすべて結合に使われるが、共有結合には電子が1つ足りない」状態になります。
この余った空孔は、マイナスの電子が抜けた穴=プラスと捉えることが出来る為「ホール(正孔)」と呼ばれます。ホールも結晶中を動き回ることが出来るため、Siに電気が流れやすくなります。
通常のSi結晶よりも「プラスの正孔」多いことから、ポジティブ(Positive)のpをとって「p型半導体」と呼ばれます。
ホール(正孔)伝導の原理
p型半導体のホール伝導について詳しく見ていきます。
Siにホウ素(B)原子が混ざると、結合電子が足りずホールが生成します。ホールが存在する部分は共有結合を作らず不安定なため、近くの電子が移動しホールを埋めて結合を作ります。
正孔が埋まり共有結合を形成すると同時に、電子の抜け穴として新たな正孔が生成します。今度は、生成した正孔を埋めるため、新たな電子が移動し、また新たな正孔を生成します。
電子が正孔を埋め続けることで、正孔が動いているように見えることを「ホール伝導」と言います。これがp型半導体で電気が流れる仕組みです。
再外殻→最外殻(2.オクテット則の下)
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