X線トポグラフィー(XRT)とは:原理と応用例
X線トポグラフィー(XRT)とは
X線トポグラフィーは「半導体結晶にX線を照射し、回折X線強度を測定することで結晶欠陥を2次元マップとして可視化する測定手法」です。
X線回折の強度は試料の結晶性によって変化し、結晶の完全性が乱れる欠陥付近ではX線回折強度が増加するため、欠陥分布を可視化することが出来ます。
XRTの原理
XRTでは結晶性試料にBragg条件を満たすような角度でX線を照射し、回折X線の強度を測定します。
X線の回折強度は転位などの欠陥部では回折強度が増加します。XRTでは欠陥部と非欠陥部の回折強度の差をコントラストとして捉えることで、欠陥分布を可視化しています。
欠陥部でX線回折強度が増加する原理は
- Bragg反射
- 消衰効果
以上の2点で説明されます。
完全結晶では回折X線が結晶内で多重回折されるため回折X線強度が低下(消衰効果)しますが、欠陥部ではBragg条件を満たさないことから多重回折が起こらず、回折X線強度が増加します。
Bragg条件とは
Bragg条件とは、結晶にX線を照射した際に回折が発生する条件です。
結晶性試料にBraggの回折条件を満たすような入射角でX線を照射すると、X線の位相が揃い、回折強度が増加します。(関連:XRD)
欠陥部で回折強度が増加することは不思議に感じますが、これはX線の「消衰効果」として知られています。
消衰効果とは
消衰効果は「回折X線が結晶内で多重反射することにより、回折強度が減少する効果」です。消衰効果は完全性の高い結晶ほど顕著に現れます。
完全結晶では、X線が結晶内で多重反射することで回折X線の取り出し効率が低下、すなわちX線回折強度が減少します。
XRTでは、欠陥部が存在する部分では消衰効果が弱く、回折X線強度低下が抑えられるため、X線強度が増加しコントラストとして観察することが出来ます。
XRTの応用例
Siウェーハなど、半導体は単結晶であることが多いため、XRTと相性の良く、欠陥マッピング評価に多用されています。
Siウェーハのスリップ観察
XRTはSiウェーハのスリップを観察するのに多用されます。
Siインゴット成長時の熱衝撃や、Siウェーハ上へのデバイス形成のための熱処理による熱応力により、Si結晶にスリップが入る場合があります。
スリップの有無・発生個所・長さを測定することが出来るため、工程管理や不良ウェーハ検査に用いられます。
GaNの転位観察
パワー半導体として注目を浴びているGaNの転位もXRTによって検出することが可能です。この例では転位が黒いコントラストとして観察されています。