フォトルミネッセンス法(PL)とは:測定原理と応用例
フォトルミネッセンス法とは?
フォトルミネッセンス(PL)法は「物質に光を照射し、励起された電子が基底状態に戻る際に放出される光を観測する方法」です。
半導体のフォトルミネッセンス測定を行うことで、材料の結晶性や、結晶欠陥の有無・種類・濃度を知ることが出来ます。
測定原理
PL法では「光照射により生成した電子・正孔対が、基底状態に戻る際に発光する光を解析」します。
物質のPL発光は材料の欠陥や不純物の影響を大きく受けるため、解析により半導体の欠陥・不純物の情報が得られます。
半導体のPL法では、バンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射することで電子正孔対を生成し、様々な過程を経た後、再結合する際の発光波長・強度を解析します。
発光過程には以下の種類が存在します。
- バンド間再結合
- 自由励起子再結合
- 自己束縛励起子再結合
- ドナー正孔再結合
- 電子アクセプタ再結合
- ドナーアクセプタ再結合
- 不純物再結合
価電子帯のホールと伝導帯電子の再結合による発光。バンドギャップ相当の発光エネルギーとなる。
自由励起子の再結合による発光。バンドギャップからクーロン力分低いエネルギーの発光が観察される。
自己束縛励起子の再結合による発光。自由励起子再結合よりも更に低いエネルギーの発光。
ドナー準位の電子と価電子帯の正孔による再結合。
伝導帯の電子とドナー準位による再結合。
ドナー準位の電子と、アクセプター準位の正孔による再結合。
不純物準位を介した再結合。
半導体のPLスペクトルにはこれらの情報が含まれるため、解析を行うことで欠陥や不純物濃度を知ることが出来ます。
PLの応用例
Si中の炭素濃度測定
Si中の炭素濃度はPL法によって測定することが可能です。
下図は炭素濃度2.07ppmaのSiウェーハにボロンイオンをドーズ(イオン注入)した試料のPLスペクトルです。
下記の通り、H線・G線・C線はすべてSi中の炭素に起因する発光です。
- H線:1340nm
- G線:1279nm
- C線:1570nm
Ciに起因する発光
CiCs複合体起因の発光
CiOi複合体起因の発光
上記スペクトルの強度を解析することで、炭素濃度を定量することが可能です。
他にも、SiにPL法を適用することでドーパント濃度やデバイス不良につながる転位を検出することが可能です。