半導体のバスタブ曲線とは:初期故障・偶発故障・摩耗故障の違い

なぜバーンインを行うと、市場に出た後の故障を減らせるのでしょうか。鍵となるのが「バスタブ曲線」という考え方です。

バスタブ曲線とは:バーンインとの関係

バスタブ曲線とは:半導体の故障とバーンイン

バスタブ曲線とは「製品の故障率を時間軸で見た場合、故障率は浴槽(バスタブ)のような形を描くという経験則」です。

横軸に時間、縦軸に故障率を取ってグラフを描くと、多くの工業製品(半導体に限らず)は、稼働し始めた直後に故障率が高く、その後しばらく低い状態が続き、寿命が近づくと再び故障率が上がっていく、という3つの期間に分けられます。この形が浴槽の断面に似ていることから、バスタブ曲線と呼ばれています。

故障の3つの期間は以下の通りです。

半導体の信頼性試験と3つの故障モード:初期故障・偶発故障・摩耗故障
  • 初期故障期
  • 製品を使い始めてすぐの時期に、故障率が高くなる期間

  • 偶発故障期
  • 初期故障期を過ぎ、故障率が低い状態で安定する期間

  • 摩耗故障期
  • 使用期間が進み、材料の経年劣化や摩耗が蓄積、再び故障率が上昇する期間

初期故障期

半導体の初期故障期の例

初期故障期(Early failure period)は、製品を使い始めてすぐの時期に、故障率が高くなる期間」です。

製造時に紛れ込んだ潜在的な欠陥(材料の微細な欠陥など)を持つ製品が、実際に使われ始めることで早期に故障として表面化するために起こります。時間の経過とともに、こうした「弱い個体」がふるい落とされていき、故障率は徐々に下がっていきます。

半導体の初期故障の例は以下が挙げられます。

  • 例1:回路中の異物・ゴミ
  • 製造工程中に混入した微細な異物(ゴミ)が回路パターンの間に挟まることで、隣り合う配線同士がショートし、故障につながる

  • 例2:ゲート酸化膜の欠陥
  • ゲート酸化膜にできたピンホールなどの欠陥部分に電圧が集中し、絶縁破壊による短絡が起こり、故障につながる

偶発故障期

半導体の偶発故障例

偶発故障期(Random failure period)は、初期故障期を過ぎ、故障率が低い状態で安定する期間です。

この期間の故障は、製品自体の欠陥というよりも、予測が難しい偶発的な要因によって起こるとされ、故障率はほぼ一定で推移します。製品の実質的な「寿命」として扱われるのは、主にこの期間です。

  • 例1:想定外の過電圧
  • サージ電圧など、想定を超える電圧がゲート酸化膜にかかることで絶縁破壊が起こり、故障につながる

  • 例2:想定外温度での動作
  • 想定を超える急激な温度変化により、はんだ接合部が割れ(クラック)、故障につながる

摩耗故障期

半導体の摩耗故障例

摩耗故障期(Wear-out failure period)は、材料の経年劣化や摩耗が蓄積し、再び故障率が上昇する期間です。

時間をかけて壊れるため、個体差よりも使用年数の影響が大きいのが特徴です。半導体の場合、配線の劣化やゲート絶縁膜の経年的な劣化といった、時間とともに少しずつ進行するメカニズムが故障の主因になります。

  • 例1:エレクトロマイグレーション
  • 金属配線の内部にできたピンホールが、長時間の通電によって徐々に拡大し、経年で完全に断線して故障につながる

  • 例2:TDDB(経時絶縁破壊)
  • 正常なゲート酸化膜であっても、長時間の電圧印加によって内部に劣化が蓄積し、やがて絶縁破壊が起こり、故障につながる

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バーンインの効果:初期不良品の流出防止

バーンインの本質的な役割は、本来なら市場に出た後の初期故障期に起こるはずだった故障を、工場内で前倒しして発生させてしまうことにあります。

半導体におけるバーンイン工程の効果:初期不良のスクリーニング

バーンインは高温・高電圧のストレスをかけて時間の経過を「加速」させることで、通常なら市場で数ヶ月かけて緩やかに顕在化する初期故障を、工場内での数時間〜数十時間という短い試験期間の中で強制的に発生させます。

これによって、初期故障を起こしやすい弱い個体をあらかじめ取り除き、出荷される製品を偶発故障期からスタートさせることができます。

言い換えると、バーンインとは「バスタブ曲線の左端(初期故障期)を、出荷前の工場内に押し込めてしまう工程」だと理解すると分かりやすいです。

この結果、製品を受け取ったユーザーは、本来であれば経験したはずの初期故障の多くを経験せずに済むことになります。

過剰なバーンインのリスク:摩耗故障期への突入

バーンインで留意すべきは「温度・時間をかければかけるほど良いというものではない」という点です。

半導体信頼性試験における過剰なバーンインの弊害

バーンインの時間や温度・電圧を必要以上に強くかけすぎると、初期故障期を終わらせるだけでなく、製品の寿命そのものを消費し、摩耗故障期に突入させてしまうリスクがあります。

適切なバーンインであれば、出荷前の工場内で初期故障期だけを削り取り、市場に出る製品は偶発故障期からスタートします。しかし過剰なバーンイン(オーバーストレス)を行うと、工場内で摩耗故障期の領域にまで踏み込んでしまい、出荷前にすでに寿命を消費してしまいます。

バスタブ曲線でいえば、狙っているのはあくまで曲線の左端(初期故障期)だけですが、過剰なストレスをかけてしまうと、本来まだ先にあるはずの右端(摩耗故障期)にまで踏み込んでしまいます。

そのため、バーンインの条件(温度・電圧・時間)は、初期故障をきちんとふるい落としつつ、製品本来の寿命を必要以上に削らない範囲に、慎重に設定する必要があります。

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