MOSFETのゲート絶縁膜信頼性評価:TZDBとTDDBの違い

ゲート絶縁膜の信頼性評価

MOSFETはゲート電圧を印加することでチャネルの反転層を誘起し、スイッチングするデバイスです。ゲート電極直下には絶縁膜(酸化膜)が形成され、基板と電気的に分離されています。

長期間使用される半導体デバイスにおいて、ゲート絶縁膜には「大面積・長時間にわたって絶縁性が保たれること」が必要です。すなわち、絶縁破壊耐圧強度が高いことが重要です。

ゲート絶縁膜の信頼性評価として以下の手法があります。

  • TZDB(タイムゼロ絶縁破壊)
  • TDDB(経時絶縁破壊)

MOSFETとは:動作原理・構造・応用例

測定原理

絶縁破壊耐圧強度の測定には以下の様な装置が用いられています。

酸化膜の絶縁破壊耐圧特性は、シリコン表面に多数キャリアが蓄積するように電圧を印加して測定されます。例えばp型Si基板の場合、ゲート電極が負・Si基板が正となるように電圧を印加します。

下図は耐圧測定を行うウェーハの模式図です。

耐圧測定 TEGウェーハ

絶縁破壊耐圧測定は「ウェーハ上に素子を多数形成し、測定を行うことで結果を統計的に評価」します。

上記の測定のうち、

  • ゲート電圧を増加させた際の絶縁破壊挙動=TZDB
  • ゲート電圧またはゲート電流一定でストレスを印加した際の絶縁破壊挙動=TDDB

となります。

タイムゼロ絶縁破壊(TZDB)

TZDB(Time Zero Dielectric Breakdown)とは「ゲート電圧を徐々に増加させながらリーク電流を測定した際に得られる絶縁破壊電圧」です。TZDBが大きいほど絶縁膜の耐圧特性が良好なことを意味します。

絶縁破壊前は電圧におおむね比例したリーク電流ですが、絶縁破壊に伴い急激にリーク電流が増加します。この時のゲート電圧を絶縁破壊耐圧と呼びます。

TZDBの評価には、絶縁耐圧EBDと破壊頻度の関係を示した耐圧分布ヒストグラムが用いられます。

上図の通り、耐圧分布は3つのモードに分類されます。

  • Aモード
  • EBD<1MV/cmで起こる、酸化膜のピンホールやごみによって生じるショート

  • Bモード
  • 1MV/cmBD<8MV/cmで起こる、酸化膜中の欠陥(COPや酸素析出物)

  • Cモード
  • 8MV/cmBDで起こる、均一な酸化膜の絶縁破壊(真性絶縁破壊)

(出典:半導体シリコン結晶工学)

MOSFETの耐圧においては、酸化膜の真性破壊電圧を表すCモードの頻度が高いほど高品質となります。

経時絶縁破壊(TDDB)

TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)とは「酸化膜に定電圧または定電流を印加し続けた際に、ある時間経過してから絶縁破壊を起こす現象」です。TDDBが長いほど絶縁膜の信頼性が高いことを意味します。

TDDBは定電圧または定電流で、評価素子の50%破壊時間を測定することで求められます。

近年のMOSFETのスケーリング則による絶縁膜厚の減少に伴い、ゲートの電界強度が増加しています。従って、TDDBは半導体デバイスの寿命予測に重要な指標となっています。

MOSFETのスケーリング則

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