半導体の降伏現象とは?ツェナーとアバランシェの違い
降伏現象とは?
下記はpn接合に順方向・逆方向バイアスを印加した際の電流値を表したグラフです。
pn接合に順方向バイアスを印加すると、空乏層が狭まり、pn接合に順方向の電流が流れます(整流作用)。
一方、逆方向バイアスを印加した場合、空乏層が広がるため電流は流れません。一方向にしか電流を流さない性質を「半導体の整流作用」と呼びます。
しかし、pn接合に大きなを逆方向バイアスを印加すると、ある電圧から急激に逆方向に電流が流れるようになります。これを「降伏(ブレークダウン)」と呼びます。
ツェナー降伏とアバランシェ降伏
半導体には2種類の降伏があります。
- アバランシェ降伏
- ツェナー降伏
電子の雪崩(なだれ)を利用した逆方向電流
電位障壁を通り抜ける「トンネル効果」により生じる逆方向電流
それぞれの降伏の原理を解説していきます。
アバランシェ降伏の原理
アバランシェ降伏は、pn接合に強い逆方向バイアスを印加した際に発生します。
pn接合に大きな逆バイアスが印可されると、p型領域の自由電子(少数キャリア)が電界により加速されます。
加速された電子は結晶格子を構成するSi原子に衝突し、電子をたたき出します。たたき出された電子は更に加速され、また別の電子をはじき出します。
連鎖的に自由電子が生成する結果、ダイオードに急激に大電流が生成します。これがアバランシェ降伏の原理です。
電子雪崩の模式図
電子の衝突により自由電子が生成する様子を下図に示します。
加速された自由電子は、Si-Si結合を形成する結合電子に衝突し、結合を切断します。
結合電子は自由電子に、電子の抜け穴として正孔が生成します。
電子の加速による結合電子への衝突が連鎖的に繰り返され、電子雪崩が発生します。
アバランシェ降伏のバンド図
アバランシェ降伏では、大きな逆バイアスの電界によりバンドが傾きます。
バンドの傾きにより電子は加速・衝突し、新たな電子正孔対を生成します。加速・衝突が繰り返されることでキャリアがネズミ算式に増加していきます。
ツェナー降伏の原理
ツェナー降伏は「高ドーパント濃度のpn接合に、強い逆バイアスを印加」した際に発生します。
高ドーパント濃度のpn接合は空乏層幅が狭く、空乏層に高電圧が印可されます。
高電圧によりSi-Si結合電子(価電子)が引き抜かれ、自由キャリアを生成するため電流が流れます。
キャリア発生の模式図
ツェナー降伏でキャリアが発生する様子を示します。
通常、価電子はSi-Si結合を形成する共有結合電子として存在するため、電流は流れません。
大きな逆バイアスが印加されると共有結合電子が引き抜かれ、電子・正孔対が生成します。電子・正孔がキャリアとなり電流が流れます。
ツェナー降伏のバンド図
ツェナー降伏では、狭い空乏層に大きな逆バイアスが印加されます。
p型半導体の価電子帯とn型半導体の伝導帯の距離が近くなり、価電子帯の電子が伝導帯に通り抜ける様になります(トンネル効果)。
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