原子間力顕微鏡(AFM)とは:測定原理と応用例
原子間力顕微鏡とは
原子間力顕微鏡(AFM)は「半導体などの材料表面構造を高精度に分析する手法」です。
AFMはナノメートルオーダーの凹凸を検出することが出来ることから、Siのステップ-テラス構造や表面再構成を検出することができます。
原理
AFMではnmサイズのとがった針(プローブ)を試料に近づけ、針先と試料の間に働く原子間力を検出することで、表面の凹凸を検出します。
あらゆる物質間には原子間力と呼ばれる弱い力が働いています。AFMの針先と試料の間にも原子間力が働いており、試料表面の凹凸による原子間力の変化を検出することで、表面の凹凸を測定しています。
下図はAFMの装置構成の例です。
AFMの探針はカンチレバーと呼ばれる板バネの先端に取り付けられています。試料と探針の間に働く原子間力によって、カンチレバーがたわみます。
カンチレバーのたわみ(変位)は、光こて法と呼ばれる手法で検出されます。光こて法とは、カンチレバーの背面にレーザーを照射し、反射光を2分割されたフォトダイオードで検出します。
カンチレバーがたわむとレーザー光の反射位置が変位し、2分割されたフォトダイオードの光量差が変化するため、カンチレバーの変位を電流として検出することができます。
応用例
AFMは非破壊でナノメートルオーダーの微細構造を観察できる唯一の方法です。nmオーダーで微細化が進む半導体分野において、非常に有力な表面観察法として活用されています。
Si表面のステップ構造観察
Si(111)表面にはステップ/テラス構造と呼ばれる、階段状の原子配列が形成されることが広く知られています。下図はSi(111)面のAFM観察像です。
階段状のステップ/テラス構造が明瞭に観察できていることが分かります。
1つのステップの高さはわずか3.1Å(=0.31nm)です。これほどまでに細かい段差を検出できるのはAFMまたはTEMのみでしょう。
Si(111)表面超構造観察
Si(111)表面は通常ダングリングボンドと呼ばれる未結合手が露出し不安定である。しかし、多少の熱エネルギーを与えると「7×7」表面超構造と呼ばれる安定状態を取ることが知られています。
下図はSi(111)表面のAFM像です。
AFMにより原子1つ1つが明瞭に観察され、Si(111) 7×7超構造の特徴である菱型(黒い点を頂点とする)が観察できています。
ひし形の頂点である黒い点は原子空孔であり、菱型内部に含まれる点1つ1つは原子です。AFMでは原子構造ですら明瞭に観察することが可能です。