二次イオン質量分析法(SIMS)とは:測定原理と応用例
二次イオン質量分析法(SIMS)とは
二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrinetry)は「試料に高エネルギーのイオンビームを照射し、発生する二次イオンを分析することで、元素の定量や深さ方向分析を行う手法」です。
ほぼ全種類の元素に対応していて高感度であることから、固体中の微量元素(ppb~pptレベル)に適した手法です。また、深さ方向分析も可能で、半導体のデバイス構造評価にも重宝されている分析法です。
原理
SIMSでは、試料にイオンビームを照射し、スパッタ効果により発生した試料に由来する二次イオンを質量分析計で分析し、元素分析を定量します。
固体表面にイオンビームを照射すると、原子同士の衝突により以下の粒子が二次的に生成します。
- 中性粒子
- 二次イオン
- 電子
二次粒子のうち、電荷を持たないもの。スパッタで生じる粒子のうち99%以上は中性粒子である。
二次粒子のうち、電荷を有するもの。SIMSの分析対象。
高エネルギーのイオンビームにより励起され、真空中に放出される電子。
SIMSでは、放出される二次粒子のうち荷電した二次イオンを検出対象とします。固体表面から放出される二次イオンは質量分析計(MS)で分析し、定性・定量を行います。
SIMSでは更に、深さ方向分析を行うことが出来ます。
SIMSはイオンビーム照射により、固体表面を物理的に「掘っていく」ことで分析を行います。つまり、掘っていった深さと各元素の検出強度を調べることで、深さ方向の元素定量が可能です。この特性を利用して、デバイスにおける異種材料間の界面位置特定などに活用されます。
なお、分析深さはイオンビーム強度と各材料に固有のスパッタレートから算出します。
応用例
SIMSは適用元素の多さと高い検出感度から、半導体分野において広く応用されています。
異種材料間の界面位置特定
半導体材料ではテロエピタキシャル成長など、異種材料の接合界面が生じます。この接合界面位置を特定するためにSIMSが用いられます。
上図は、AlGaAs/GaAs試料のSIMS分析プロファイルです。
分析深さが深くなるにつれ、Alの二次イオン強度が減少していることが分かります。Alの二次イオン強度が50%になる深さを接合界面とすれば、約1.0μmを接合界面とみなすことができ、SIMSによって界面位置を特定することが出来ます。
SiC中の不純物濃度評価
上図はSiCウェーハの深さ方向分析結果です。
窒素・アルミニウム・リン濃度は表面ほど高く、バルクに向かうにつれて一定の値となっていることが確認できます。