シリコンのゲッタリング:IG・EGの原理

半導体Siウェーハの表面金属汚染はデバイス特性を直接的に劣化させます。

例えば、デバイス工程において重金属汚染(酸化・拡散熱処理やプラズマエッチング工程など)が発生するとデバイス特性を劣化させ、歩留まりを低下させてしまいます。

ここで活躍するのが「ゲッタリング」です。

ゲッタリングとは

シリコン ゲッタリング

ゲッタリングとは「Siウェーハに金属汚染の捕獲サイト(ゲッタリングシンク)を形成することで、デバイス工程で生じる金属汚染原子を捕獲し、Siウェーハ表面・デバイス活性層から金属汚染を取り除く手法」です。

一般に、高温において、シリコン単結晶中の金属原子の拡散係数は大きいことが知られています。

デバイス工程で発生した金属汚染原子はウェーハ表面に到達し、温度低下に伴う固溶度低下によって析出物を形成します。この析出物が2次欠陥の形成要因となり、デバイス活性層に形成された場合には、半導体デバイスの特性を劣化させます。

そこでゲッタリングの目的は、電気的に活性となる欠陥を形成しうる不純物金属を、デバイス活性層から除去し、完全性の高く清浄なデバイス活性層を実現することです。

ゲッタリングは以下の3プロセスから構成されます。

  1. ウェーハ表面近傍から汚染金属を取り除く・放出させる
  2. 金属をゲッタリング層へ拡散させる
  3. 金属を捕獲する

このプロセスによって、表面の金属原子がゲッタリングサイトに捕獲され、表面のデバイス活性層から汚染を遠ざけます。

外部ゲッタリングと内部ゲッタリング

ゲッタリングには外部ゲッタリングと内部ゲッタリングの2種類があります。

内部ゲッタリング 外部ゲッタリング
  1. 外部ゲッタリング(EG:Extrinsic Gettering)
  2. 外的手段によって導入した歪・応力場・欠陥をEGシンク(捕獲サイト)として利用するゲッタリング。通常はウェーハ裏面に導入し、サンドブラスティングによる機械的ダメージ、リンの高濃度拡散、Si3N4膜やpoly-Si膜のCVD成長によって形成される。

  3. 内部ゲッタリング(IG:Intrinsic Gettering)
  4. as-grown状態で存在、または熱処理によって形成される、ウェーハ内部に存在する欠陥をIGシンクとして利用するゲッタリング。代表的なものはCZシリコン単結晶における不純物酸素・酸素析出物である。

シリコン中の酸素の挙動:固溶度・定量・析出

EG・IGの他に、化学ゲッタリング(CG:Chemical Gettering)をゲッタリングの1種とすることもあります。

化学ゲッタリングでは、塩酸含有ガス中でウェーハを熱処理することで、蒸気圧の高く蒸発しやすい金属塩化物を形成し、ウェーハ表面から金属原子を除去します。Siのエピタキシャル成長のその場(in-situ)クリーニングに利用されています。

エピタキシャル成長の原理:Siのエピ成長

付録:金属の拡散距離

各種プロセス温度における、金属元素の1時間拡散距離は以下の通りです。

1時間拡散距離(=√(Dt)) [μm]
700℃
800℃
900℃
1000℃
1100℃
1200℃
H3.3×1034.3×1035.4×1036.5×1037.6×1038.7×103
Li5.8×1028.4×1021.1×1031.5×1031.8×1032.2×103
Cu3.2×1034.0×1034.9×1035.8×1036.7×1037.5×103
Ag1.94.69.7
1.8×103.1×104.9×10
B3.5×10-42.2×10-31.1×10-23.9×10-21.2×10-13.1×10-1
Al1.1×10-37.4×10-33.6×10-21.3×10-14.1×10-11.1
C7.5×10-34.2×10-21.8×10-15.9×10-11.64.0
Ge2.0×10-52.7×10-42.3×10-31.4×10-26.6×10-22.5×10-1
Ti3.4×10-17.9×10-11.62.84.77.2
N1.6×10-31.0×10-24.6×10-21.7×10-15.0×10-11.3
P3.7×10-42.9×10-31.6×10-26.5×10-22.2×10-16.3×10-2
As1.9×10-41.4×10-37.3×10-32.9×10-29.6×10-22.7×10-1
Sb9.4×10-57.1×10-43.9×10-31.6×10-25.4×10-21.5×10-1
O6.5×10-22.7×10-18.9×10-12.45.61.2×10
Cr1.6×1022.7×1024.2×1026.2×1028.7×1021.2×103
Mn9.6×1012.0×1023.6×1026.0×1029.2×1021.3×103
Fe3.7×1025.4×1027.4×1029.7×1021.2×1031.5×103
Co9.94.7×101.7×1025.1×1021.3×1032.9×103
Ni1.6×1032.1×1032.6×1033.1×1033.7×1034.2×103

(出典:半導体シリコン結晶工学)

金属元素によっては1時間で1mm以上拡散・移動するものもあることが分かります。

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