シリコンの結晶欠陥:空孔・転位・析出物とは
Siの結晶欠陥
半導体デバイスの微細化・高集積化に伴い、シリコン結晶の「微小欠陥(microdefect)」の悪影響が問題視されています。
微小欠陥の大きさに定義はありませんが一般に、以下に示すようなnm~μmオーダーの欠陥を微小欠陥と呼びます。
代表的な微小欠陥は以下の通りです。
- 空孔
- 格子間原子
- 転位
- COP(Void)
- 析出物
単原子空孔や格子間原子の生成から、COP(Void)や転位の形成までを幅広く解説します。
原子空孔・格子間原子
シリコンの結晶構造において「正規の格子位置から外れ、格子間に存在する原子を自己格子間原子(interstitial)、原子が抜けた格子点を空孔(vacancy)」と呼びます。
格子間原子と空孔はボロンコフ理論(Voronkov's theory)に従い結晶成長時に導入される場合と、シリコンの熱酸化・熱窒化により格子間シリコンが後発的に導入される場合がある。
原理上、1個の格子間原子と空孔が遭遇すれば消滅する。これを対消滅と呼ぶ。
転位・積層欠陥
シリコン結晶中に導入された格子間原子は集合し、転位・積層欠陥を形成します。
転位とは、結晶中の線状欠陥であり、積層欠陥とは原子の規則的な積み重ね周期がずれた状態を指します。
Siの積層欠陥には
- 侵入型積層欠陥
- 空孔型積層欠陥
の2種類が存在しますが、通常シリコン結晶中に観察される積層欠陥は侵入型です。
シリコン中の転位はデバイス特性に悪影響を及ぼすため、転位密度が小さい程良質なシリコン結晶と言えます。
COP
シリコン結晶中の空孔は凝集し「COP(crystal originated particle)」と呼ばれる空洞(void)を形成します。
COPは(111)面で囲まれた八面体形状をしており、TZDB・TDDBなどの酸化膜耐圧を劣化させることが知られている。従って、低COPであるほど良好なシリコン結晶となります。
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析出物
CZ法で作製したシリコン結晶中には石英ルツボ由来の酸素が混入しています。
シリコン結晶中の酸素はシリコンと結合し析出物(SiO2)を形成します。
SiO2は形成時にSiの2.2倍の堆積膨張を伴うため、析出物が原因となり転位ループや積層欠陥が発生するため、デバイス工程で問題となります。
一方、酸素析出物は不純物金属のゲッタリングサイトとして働くため、デバイス工程での表層金属汚染を低減する効果があります。